―― トマトの酸味が牛肉を救う、飲み干せる一杯 ――
台北の牛肉麺といえば、濃厚な「紅焼」か、澄んだ「清燉」が主流だ。
そのどちらでもない第三の道──「番茄(トマト)」を選ぶ店がある。
府順番茄刀削牛肉麵。
赤く染まったスープをひと口すすれば、トマトの酸味と甘みが牛骨の重さをやわらげ、想像以上に軽い。
こってりでも薄味でもない。
その中間にある飲み干せる牛肉麺だ。
刀削麺という、食感のゆらぎ
麺は、塊の生地を刀で削り落とす刀削麺。
同じ形が二つとない。
厚い部分はモチモチと重く、薄い部分はピロピロとした軽さがある。
噛むたびに食感が変わり、トマトスープを抱えたまま歯の間から抜けていく。
機械麺とは違う、少し不揃いな手の温度が残っていた。
トマトが主役のスープ
生のトマトをたっぷり使い、煮込んだスープは角のない酸味が特徴だ。
甘みと旨味が自然で、どこかイタリアンの影を感じる瞬間がある。
牛肉麺というより、トマトスープ麺に牛肉が入っている──そんな印象すらある。
脂身の多い紅焼に疲れた日には、この軽さがありがたい。
葱油餅というもう一つの主役
ここでは、麺だけを食べて帰るのは惜しい。
葱油餅(ネギパイ)の評判が良い。
パリパリに焼かれた生地をちぎり、トマトスープに沈める。
その瞬間、生地の層がほどけ、甘酸っぱいスープを吸い込んでいく。
サイドメニューではあるが、麺との相性は主役級だ。
必食メニュー
蕃茄牛肉麺(トマト牛肉麺)
赤いスープ、白い刀削麺、大きな牛肉。
色のコントラストが美しく、味は見た目以上に軽やか。
肉絲炒餅
葱油餅を細切りにし、肉と野菜と一緒に炒めたもの。
焼き餅の香ばしさと、噛むほどに出てくる甘みがいい。
混み合う店内で、静かに麺をすする
繁華街の外れにあるが、食事どきには次々と客が入ってくる。
店は広くないが回転がよく、湯気が絶えず立ち上がっている。
遠くからわざわざ来る店ではないかもしれない。
ただ、気づけばまた食べたいと思う。
そんな距離感が心地よかった。
牛肉麺の世界には、まだ余白がある。
濃厚でも、あっさりでも、その中間でもない。
トマトが牛肉を軽くし、刀削麺がそれを支えている。
住所: 台北市中山區撫順街41巷1之7號
営業時間: 11:00~14:00 / 17:00~20:00 (土曜・日曜定休)
アクセス: MRT「民権西路」駅 1番出口から徒歩約5分
地図: https://maps.app.goo.gl/A2DEsPRQXbg46bCJ9
「トマト(番茄)× 刀削麺」の組み合わせで有名な、知る人ぞ知る実力店。
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