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台湾の朝食屋は儲かるのか計算してみる

台北の信義区や中山区。
地価は東京と変わらないか、それ以上だ。
それでも、路地裏の朝食屋は「豆乳25元」「蛋餅35元」を掲げ、
毎朝のように紙袋を積み上げている。

スタバのラテが150元で売られている場所で、
なぜ彼らは単価60元の世界で生き残れるのか。
朝の台北で豆乳をすすりながら計算してみた。

飲料を売る錬金術

朝食屋で最も利益率が高いのは、蛋餅でも肉まんでもない。
飲料だ。

豆乳=大豆(輸入)+水
紅茶=茶葉(業務用)+水+砂糖

原価率は10〜20%台に落ちる。
蛋餅単体では薄利でも、
乾いた口を潤すために多くの客が豆乳を追加する。
全員に自然にクロスセルされるこの液体こそが、
朝食屋の最大の収益源だ。

液体は回転が早く、在庫も腐らない。
この単純な構造が、安い単価を支えている。

「統一発票」の壁に守られる小規模経営

台湾の小規模業者は、売上規模が一定以下の水準なら
「統一発票(レシート宝くじ)」の発行を免除される。
街の朝食屋の多くは、この枠内に留まるように申告しており、
営業税も簡易化される。

この税務上のボーダーラインが、
低単価でも生き残れるインフラとして機能している。
店先に貼られた「免用統一発票」のステッカーは、
朝食屋の静かな防衛線だ。

高地価をかわす「外帯」文化

台湾の朝食の8〜9割は持ち帰りだ。
つまり、客席がほぼ不要になる。
厨房とカウンターさえあれば成立し、
家賃の負担はスタバの数分の一に収まる。

滞在時間という概念がないため、
1坪あたりの売上は異常に高い。
都市のど真ん中であっても、
立地の不利をほぼ受けない業態になっている。

勝手にシミュレーションしてみる

仮に、蛋餅+豆乳で客単価60元。
朝6時〜10時の4時間で300人を捌くとする。

日販:18,000元
月商:約45万元(25日稼働)

粗利:60%として約27万元
経費:家賃10万、光熱費・雑費5万、家族経営……

ここから逆算すると、
小さな朝食屋でも、店主の手元にサラリーマン以上が残る可能性が見える。

台湾人の平均月収は6万元と聞く。
「貧しいから安い」のではなく、
儲かるから続いているという当たり前の結論に行き着く。

労働の果実

もちろん、これは楽な商売ではない。
朝3時起き、灼熱の厨房、立ちっぱなしの環境。
その対価としての利益だ。

外帯の袋を受け取るとき、
気づくのは効率でも節約でもなく、
この業態が極限まで無駄を削ぎ落とした
都市型・高回転ビジネスであるという事実だ。

……と、豆乳を飲みながら勝手に計算してみた。
実際の帳簿は知らない。
ただ、おばちゃんの迷いのない動きは、
勝っている経営者の手つきだった。


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