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台北・中山区 康荘伝統滷肉飯についての記録

蒸し暑い吉林路を歩いていると、ふと冷たい空気に足が止まった。
外の湿気と熱気が急に遠ざかり、冷たい空気が流れてくる。

康荘伝統滷肉飯は、台北の食堂らしさを残しつつ、冷房がしっかり効いている。
台湾で食事をしていると、この涼しさがどれほど貴重かを思い知る。
汗をかかずに滷肉飯を食べられるだけで、料理の印象が変わる。

店先の赤と白の看板は、どこかチェーン店の標準デザインのように見える。
写真付きのメニュー表にも番号が振られ、個人店のざらついた空気は薄い。
だが、台北市内に同名の店がいくつもあるわけではない。
この吉林路の店が、本店であり、唯一の店なのかもしれない。

冷房という最強の調味料

台湾の食堂は、食べているうちに汗が落ちてくるのが普通だ。
扇風機が回っていても、熱気は消えない。

この店の冷房の強さは、料理そのものより先に記憶に残る。
席に座ると、身体から熱がゆっくり抜けていき、ようやく落ち着いて食べられる。

滷肉飯を口に運ぶと、脂の甘さと醤油の重みが、冷気に包まれてすっと馴染む。
暑さで味覚が鈍ることもない。
台北の街で、この環境は何よりの贅沢だと思う。

魯肉飯は万人向けの輪郭

康荘の滷肉飯は、脂身と赤身のバランスが良い。
八角の香りは抑えられ、滷汁は濃すぎず薄すぎない。
際立った個性はないが、その「普通さ」が安心を生んでいる。

ご飯と滷汁が均一に絡み、ひと口ごとに重さが積み重なる。
派手な驚きよりも、静かな満足がある味だ。
冒険よりも、確実に腹を満たしたい日のための滷肉飯。

コスパの異常な健全さ

吉林路という中心部にありながら、値段は不思議なほど安い。
滷肉飯も、サイドメニューも、出てくる量に対してかなり控えめな価格だ。

燙青菜は茹で具合がちょうどよく、野菜の甘さがそのまま残っている。
スープも種類が多く、どれを選んでも外れがない。

安くて、早くて、涼しい。
労働者にとって必要な三つの条件が、ここでは自然に揃っている。
この店がどこかチェーン店に見える理由は、そんな「整いすぎている個人店」だからかもしれない。

一杯を食べ終えたあと

滷肉飯を食べ終わって外に出ると、また湿気が身体にまとわりつく。
さっきまでの冷気が嘘のように消え、通りには熱が戻っている。

特別な発見があるわけではない。
しかし、あの涼しさと、静かに整った食事は、旅の途中でふと救われる瞬間だった。

康荘伝統滷肉飯は、派手ではないが、台北の街の一角に確かに根を下ろしている。
また暑さに疲れた頃、冷房の風を探すように店を見つける気がする。


康荘伝統滷肉飯

住所: 10471台北市中山區吉林路436號

営業時間: 10:00 – 20:30 (Googleマップでは24時間表記もあるが、要現地確認)

アクセス: MRT中山國小駅から徒歩約10分。吉林路のグルメストリート沿い。

地図https://maps.app.goo.gl/RMnRgV5bakLD7m959

冷房完備で清潔な店内。魯肉飯だけでなく、便當(弁当)メニューも充実している。味のクセが少なく、初心者にも安心。


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