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台中・中区 山河魯肉飯についての記録

台中第二市場の中心にある山河魯肉飯は、朝の早い時間から人の波が絶えない。
市場の六角形の建物の一角にあり、調理場の湯気と客の声が混ざり合う。
入口は狭く、行列は外まで伸びているが、回転は速い。

店名には魯肉飯とあるが、ここでその名を頼むと、そぼろご飯ではなく大きな角煮が出てくる。
初めて訪れた人が一瞬戸惑うところだが、台中ではこれが普通で、むしろ伝統だとされる。

台中で「魯肉飯」と呼ばれる角煮

山河の魯肉飯は、白飯の上に分厚い肉が一つ置かれる。
三層肉(豚バラ)か脚庫(モモ肉)か、肉の種類を選べる。
脂の量、繊維の強さ、煮汁の含み方が部位ごとに違う。

煮汁は甘く濃い。
皿に置かれた瞬間、白飯の表面にゆっくり染み込んでいく。
脂身の重さはあるが、煮込みの時間が長いのか、口の中で崩れるのは早い。

そぼろご飯を望むなら「肉燥飯」と言わなければならない。
台北とは呼び方が逆で、旅人はこの“台中ルール”を一度通ることになる。
市場で食べる魯肉飯の多様さが、そのまま形になっている。

夏の緑のスープ、麻薏(マーイー)

山河には、夏だけ置かれるスープがある。
麻薏という黄麻(ジュート)の若葉を揉んでアクを抜き、サツマイモや小魚と煮たものだ。
緑が濃く、とろみがあり、わずかな苦味が残る。

台中の夏を象徴する味で、南屯一帯ではよく飲まれる。
だが旅行者にとっては少しハードルが高い。
苦味と粘度が強く、角煮の脂を一度受け止めてから喉に落ちていく。

脂のある魯肉飯と、苦味の強い麻薏。
市場で働く人たちが暑さをしのぐために続けてきた組み合わせだと言われる。
台中の季節を体に落とし込むような一杯になっている。

第二市場の朝に混ざる

市場は朝が最も賑やかだ。
周辺の店が一斉に準備を始め、通路が狭くなる。
山河の前を通ると、角煮の照りと煮汁の匂いがそのまま風に混じる。

湯気が上がり、鍋の音が響き、通り過ぎる客が次々と席につく。
観光地の整った風景ではなく、買い物と食事が一体化した台中の市場らしい空気がある。

席は多くはないが、回転が早く、注文してから出てくるまでの時間も短い。
淡々と食べ、食べ終わればまた人が入ってくる。
この繰り返しが一日中続いていく。

昼は山河、夜は李海

同じ第二市場には、李海魯肉飯という店がある。
こちらは夕方から営業し、夜の市場を受け持つ。

朝と昼の山河、夕方と夜の李海。
同じ料理を出しながら、時間帯で棲み分けができている。
市場のリズムに合わせて、二つの店が空間を分け合っている。

目的地が二つあるのではなく、時間によって風景が変わるだけだ。
市場という場所の循環が、そのまま食堂の営業形態になっている。

角煮の重さと市場の音

山河の魯肉飯は、肉の厚さと煮汁の濃さがはっきりしている。
豪華さではなく、日常の重さがそのまま皿にのっている。

角煮を切り分けながら、周囲の声や鍋の音が耳に残る。
市場で食べる飯は、料理そのものだけで成り立つわけではない。
空間ごと飲み込むように味が広がる。

食べ終えて通りに戻ると、湯気の匂いがゆっくりと薄れていく。
市場の流れに飲まれながら、魯肉飯の重さだけが腹に残った。


山河魯肉飯

住所: 400台中市中區公有第二零售市場内(攤位103)

営業時間: 05:30 – 15:00 (水曜定休)

アクセス: 台中駅から徒歩約10〜15分。第二市場の台湾大道側の入口から入ってすぐ。

地図https://maps.app.goo.gl/a66weNWnE214Q6eh7

メニューの「魯肉飯」は角煮乗せのこと。「肉燥飯」がそぼろご飯。夏(6月〜9月頃)なら、台中名物「麻薏湯(麻スープ)」に挑戦したい。


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