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台中・南区 熊家湯包についての記録

忠孝夜市の通りを歩くと、蒸し籠から立ちのぼる湯気が道に流れ込んでいる場所がある。
近づくと、注文を告げる声と、蒸気のはじける音が混ざり合い、夜市の雑多な空気の中で一点だけ温度が高い。

熊家湯包。
小籠包の店だが、この店は「包む」「蒸す」という作業が、生活の一部のように淡々と続いている。


忠孝夜市の「爆漿」王者

熊家の小籠包は、持ち上げると中のスープが揺れる。
皮は薄いのに、湯気を抱えた重さに耐えている。
不用意に噛めば、熱い汁が弾けて飛ぶ。レンゲが欠かせないのは、そのためだ。

皮の弾力は強すぎない。
一口でほどける薄さと、形を保つための最小限の力。
その境界を、毎日繰り返し包む手が自然に決めているようだった。


剥皮辣椒湯包という進化形

普通の小籠包でも十分に満足できるが、ここに来たなら剥皮辣椒湯包を試したい。

台湾特有の甘辛い青唐辛子の漬物が、細かく刻まれて餡に混ざっている。
辛さは刺すようではなく、肉汁の甘みを引き締める程度のものだ。
スープをひと口すすり、次に餡を噛むと、唐辛子の香りが遅れて追いかけてくる。

夜市の喧騒の中で、思いがけず調和が生まれる味だった。


鮮蝦腐皮捲のサクサクした隙間

蒸し籠の横には油の音がある。
鮮蝦腐皮捲。湯葉でエビを包み、短時間で揚げたものだ。

湯包の柔らかさとは対照的に、こちらは軽く割れる音がする。
油の香りの後に、エビの旨味が静かに出てくる。
蒸し物と揚げ物。その往復が、夜市で食べる楽しさを作っていた。


行列と現点現蒸のリズム

注文を受けてから蒸すため、待つ時間がある。
ただ、その間に店員たちが包む姿を眺めていると、気持ちがゆっくりと夜市の時間に馴染んでいく。

蒸し籠が積み上がり、湯気が淡く立ちのぼる。
ひとつの蒸籠が開くたび、周囲の空気がわずかに温度を取り戻す。

遅い時間には売り切れることもある。
早めに来て、まだ湿った夜の匂いが残るうちに食べるのが良い。

店を出ると、通りにバイクの音が戻ってきた。
湯包の温度だけが、少しの間、身体の中に残る。


熊家湯包

住所: 402台中市南區忠孝路179號

営業時間: 11:00 – 14:00 / 16:00 – 21:30 (不定休) ※平日は午後のみの場合あり、要確認

アクセス: 台中駅からタクシーで約5〜10分。忠孝夜市の中ほど。

地図https://maps.app.goo.gl/pyK9hXYet9Bcw5tE9

忠孝夜市の行列店。「剥皮辣椒(青唐辛子)湯包」と「鮮蝦腐皮捲」が名物。スープが飛び出すので注意。


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