街角の記録– category –
ここには、台湾の街角で出会った風景をまとめている。
歩いていて、ふと目にとまった建物や仕組みもあれば、
理由もなく何度も足が向く場所もある。
そこにどんな空気が流れていたのか、
どんな人がいて、どんな時間が積み重なってきたのか。
食とは少し離れた場所の歴史や気配も、静かに残しておきたい。
台北、台中、高雄を中心に、
台湾の“街の片隅”を少しずつ集めていく予定。
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街角の記録
高雄・旗津(チージン) 高雄港の原点についての記録
―― 港を守る「天然の防波堤」 ―― 高雄港が天然の良港と呼ばれる理由は、地図を見ると一目で分かる。沖に向かって細長く伸びる砂州──旗津(チージン)。 この一本の砂の壁が、台風や台湾海峡の荒波を正面から受け止め、内側に鏡のような静水域を生み出して... -
街角の記録
高雄生い立ち。造られた街についての記録
―― 湿地を削り、海を深くし、船を呼び込んだ港の物語 ―― 海沿いを歩くと、どこか人工的な静けさがある。倉庫、クレーン、運河。どれも人間の意図が詰まりすぎていて、自然発生した街とは違う気配がある。 高雄は、最初から輸出のために設計された港町だ。 ... -
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雨の要塞・基隆についての記録 | 台湾
―― 北の端に置かれた、雨に濡れる前線基地 ―― 台湾最北端の港町・基隆(キールン)は、台北とは別の島のように雨が多い。冬の北東季節風が山にぶつかり、雲が留まり、雨が途切れない。年降水量は台北の倍以上になることもある。 傘をさすか、あきらめて濡... -
街角の記録
台北の始まり。要塞都市の影についての記録
―― 川と城壁がつくった、守るための首都 ―― 台北駅のまわりを歩くと、街は平坦に広がっているように見える。けれど、この都市は最初から「暮らすため」に選ばれたわけではない。台北は、防衛と統治を目的として形づくられた。街の明るさの奥に、かすかな緊... -
街角の記録
騎楼(チーロウ/亭仔脚)についての記録 | 台湾
―― 騎楼という、街に連続する日陰 ―― 歩いていると、ふと気づく。台湾の商店街には、どこまでも「日陰」が続いている。建物の1階が奥へ引っ込み、その前に屋根のような通路が伸びていく。騎楼(チーロウ/亭仔脚)。雨と陽射しの強いこの島では、ごく当た... -
街角の記録
台湾新幹線についての記録
―― 日本の技術と言われているけど、背景は少し複雑 ―― 台南へ向かう途中、高鐵のホームで列車を待っていた。白とオレンジの車両が風を切って通過していくのを眺めると、この高速鉄道がどんな経緯で作られたのかを思い返したくなる。見た目は日本の新幹線だ... -
街角の記録
セブンがファミマを上回る理由についての記録 | 台湾
―― 似ているが、背後に大きな差がある ―― 台北の通りを歩いていると、赤い看板と緑の看板が交互に目に入る。セブンイレブンは約6800店。ファミリーマートは約4200店。体感としての差と、数字の差はほぼ同じだ。 どちらも明るく、冷房が効き、同じような時... -
街角の記録
マンションの重厚な外観について記録 | 台湾
―― 街を歩きながら、建物の表情を観察する ―― 台湾のマンションは重厚に見える。外壁の厚み、窓の少なさ、影の深さ。同じ地震帯にある日本と比べても、輪郭がはっきりしている。 この重さにはいくつか理由がある。 外壁に使われる石材 台湾のマンションを... -
街角の記録
コンビニ密度についての記録 | 台湾
―― 気候と生活習慣が生んだ高密度の店舗網 ―― 台北では、数百メートルの範囲に複数のコンビニが並ぶ。主要ブランドはセブンと全家。朝も夜も照明が途切れず、通りからすぐに見つかる。 高密度の出店は、台湾の都市構造と気候の影響を強く受けている。 統計... -
街角の記録
バスという街の骨格についての記録 | 台湾
―― MRT の“遅刻”がつくった都市構造 ―― 台湾の公共交通は、長いあいだバスに依存していた。台北の MRT が走り始めたのは1996年。それまでの40年近く、都市の移動を支えていたのはバスだけだった。 結果として、路線は毛細血管のように張り巡らされている。...