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高雄・塩埕区 銘邦港園牛肉麺についての記録

高雄・塩埕区を歩いていると、港園牛肉麺の列が角を曲がるほど伸びていた。
そのすぐ近くに、似た名前の店がもう一軒ある。
銘邦港園牛肉麺。看板に刻まれた「港園」の文字が、静かに本家とのつながりを示している。

調べると、ここは本家の家族――三代目の嫁、あるいは兄弟が独立して開いた店らしい。
昔は商標をめぐって争いもあったという。
それでも今は、互いに別々の店としてこの街に共存している。

塩埕を歩くと、こうした“親戚店”の風景に出会うことがある。
系譜の違いが、味や店の空気に微妙な変化を生む。


本家より静かな一杯という印象

席に着き、牛肉拌麺を頼んだ。
丼が届くと、見た目は本家と大きく変わらない。
底にタレが沈み、ほぐした牛肉が麺に寄り添う。

混ぜて口へ運ぶと、港園の“剛”に対して、こちらは少しだけ“柔”だった。
ラードの重さが控えめで、醤油の角も立っていない。
味の方向性は同じなのに、当たりの柔らかさが違う。

油の厚みが少し軽くなっていて、麺がすっと入る。
食べ終わった後も、港園のような重たい余韻が残らない。
これが「マイルド」という評価につながっているのだろう。

静かな味だと思った。


盛られ方や構造は港園の遺伝子

ただ、タレの構造は完全に港園だった。
醤油、脂、肉の旨味が三層で働き、混ぜるほどに密度が増す。
刻みにんにくを加えると、一気に輪郭が立ち、油の甘さが締まる。

肉は細かく刻まれていて、麺とタレの一部として振る舞う。
本家と同じ切り方だ。
具というより、味の媒体として麺に寄り添っている。

本家との差を説明しようとすると難しいが、
食べていると自然に「これは同じ血筋の味だ」と分かる。


牛肉湯麺は雑味のないスープ

拌麺と迷ったが、汁ありの牛肉湯麺も少し味見してみた。
透明度の高いスープだった。
表面に油は少し浮くが、飲んでみると軽い。
雑味がなく、牛の香りだけが静かに残る。

港園の湯麺よりも穏やかで、体調が良くない日でも食べられそうだ。
拌麺の重さに対する逃げ道として、この湯麺は機能している。

店のマイルドさは、ここでも同じ方向を向いていた。


行列からの避難所という役割

港園は常に行列ができている。
昼も夜も、空く気配がない。
一方で銘邦は、混んではいるが、行列に飲まれるほどではない。

店内は本家より広く、座席の間隔もゆとりがある。
冷房が効いていて、食べていて疲れない。
短い滞在でも、落ち着く。

もし旅の途中で「港園を食べたいが、時間がない」と思ったなら、
ここを選ぶのは合理的だ。
味の方向は同じで、差は強さと密度の問題だけだから。

行列マネジメントの例として、こうした選択肢があるのはありがたい。


豚足の静かな存在感

銘邦では、豚足(猪脚)の評価も高い。
ふっくらと煮込まれ、皮が弾力を残しつつ、骨の近くは柔らかい。
拌麺のタレにもよく合う。
高雄のパワーフードという言葉の意味が分かる。

牛と豚の両方が同じトーンで並んでいるのが、この店らしさだと思った。


塩埕区の路地にある二つの港園

店を出ると、すぐ先に本家の行列が見えた。
方向も看板も似ているのに、客の流れが違う。
塩埕という街が、二つの港園をきちんと受け止めているのだろう。

どちらが正統かという話ではなく、
どちらもこの街の味として根づいている。

銘邦は、静けさと軽さを選んだ店だった。
港園は、重さと勢いを押し出す店だった。
両方があって、はじめて高雄の汁なし文化が見えてくる。


すこし力を抜いた一杯

銘邦港園牛肉麺で食べた丼の味は、控えめだった。
しかし、その控えめさの奥に、家族の歴史と街の時間が沈んでいた。

港園の味をそのまま写すのではなく、
すこし力を抜いて、食べやすくしたような一杯。
塩埕の生活に寄り添う味だと思った。

また港園に行く日のために、
そのすぐ近くにあるこの店も、忘れずに残しておきたい。


銘邦港園牛肉麺

住所: 803高雄市鹽埕區五福四路53號

営業時間: 10:30 – 21:00 (無休)

アクセス: MRT鹽埕埔駅から徒歩約10分。本家「港園」から徒歩2〜3分の距離。

地図https://maps.app.goo.gl/j8CMfbiNAXMprDQk9

本家「港園」から分家した店。味の系統は同じだが、こちらの方が比較的空いていて店内も綺麗。「並ばずに食べる港園の味」として重宝する。


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