―― 文青風(文芸青年風)の空気をまとった、現代の牛肉麺 ――
南屯の向心路。
古い街並みの中に、少し雰囲気の違う店があった。
白い看板、木目調の扉、開いた窓から見える柔らかい光。
牛肉麺の店というより、小さなカフェのようだった。
この「文青風」の空気が、まず目を引いた。
牛肉麺は油と重さのイメージが強いが、
この店にはその固定観念を軽くほどくような明るさがあった。
文青風という「更新」
店内は清潔で、整えられたテーブルが淡い照明に照らされている。
伝統的な赤い提灯や雑然とした厨房はない。
それでも、店が漂わせる“生活の匂い”は失われていなかった。
若い女性のひとり客もいた。
牛肉麺が「特定の層の食べ物」ではなくなりつつある象徴のようだった。
台湾の食文化は、こうして静かにアップデートされていくのだと思う。
牛腱心がほどける紅焼牛肉麺
看板の紅焼牛肉麺は、まずスープの深さに気付く。
牛骨と漢方を長く煮込んだ香りが湯気から立ち上がり、
その奥に醤油の輪郭が静かに潜んでいた。
肉は牛腱心。
脂は少なく、繊維に沿ってゆっくりほどける。
「とろける」ではなく「解ける」に近い。
重さがないので、スープも最後まで飲める。
麺は細麺、拉麺、冬粉から選べる。
この日は太めの拉麺を選んだが、コシがあり、
濃いスープとぶつかるように絡む。
一口ごとに形が変わる丼だった。
温玉牛肉乾拌麺という変化球
汁なしの乾拌麺には温泉卵が乗っていた。
黄身を割ると、麺の表面を静かに覆う。
伝統の牛肉麺とは違う構造だが、違和感はなかった。
台湾の味に、日本の油そばやカルボナーラの影響が重なる。
こういう組み合わせを自然に受け入れるところに、
台中という街のゆるさを感じた。
スープは無料で「加湯」できる
文青風でも、台湾の食堂らしさは残っている。
スープは無料で追加でき、店員は何も言わずに注いでくれる。
軽やかな店構えと、素朴なサービス。
その両方が同じ空間に存在していることが、この店の心地よさだった。
丼を空けて席を立つと、入れ替わりで客が入ってきた。
南屯の通りにしては、人の流れが速い。
そんな店だった。
住所: 408台中市南屯區永春東路363號
営業時間: 11:00 – 14:00 / 17:00 – 20:00 (無休)
アクセス: 台中駅からタクシーで約15〜20分。南屯区の住宅街エリア。
地図: https://maps.app.goo.gl/KA5TW9ZuyFs8KUAN7
カフェのようなおしゃれな店内で食べる、本格派の紅焼牛肉麺。スープのお代わり無料。「温玉(温泉卵)」のトッピングがおすすめ。
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