―― いくつかの推定方法を歩きながら試してみる ――

台湾の街を歩いていると、
気づかないうちに次のドリンク店(手搖飲)が目に入る。
角を曲がるたびに看板が変わり、
「こんなにあったか?」と、いつも思う。
復興南路を歩いていても、
忠孝東路を横切っても、
MRTの出口を出るたびに、必ず一軒は視界に入る。
しかもそれらは、
観光地向けの派手な店ばかりではない。
昼休みの会社員が立ち寄り、
学生が片手に持って歩き、
配達員が次の注文を受け取りに来る。
「流行っている」というより、
すでに街のインフラに近い。
ふと、台湾全体ではどれくらいの数になるのかが気になった。
正確な統計は知らない。
だが、この密度なら、
歩きながらでも大まかな輪郭は掴めそうな気がした。
なら、いくつかの推定方法を並べてみようと思った。
人口と「ひとり当たりの購入数」から考える
まず、
人がどれくらいの頻度で買っているのかを考えてみる。
昼どきのオフィス街では、
同じ店に短時間で何人もが出入りする。
一方で、
住宅街の店は朝と夜が中心だ。
全員が毎日飲んでいるわけではないが、
「飲まない日が続く人」もあまり多くなさそうだ。
通勤・通学の動線に店が組み込まれている以上、
一定数は、ほぼ習慣として買っている ように見える。
ここから、ようやく仮定を置く。
台湾の人口は、約2,300万人。
街の様子を見ている限り、
台湾人は 1日1杯飲んでもおかしくない。
仮に人口の30%、
約700万人が「ほぼ毎日1杯買う層」だとする。
→ 1日あたり700万杯。
次に、
一店舗がどれくらい売れるか。
ピーク時だけを見ればもっと出るが、
平日・雨天・閑散時間も含めれば、
200〜300杯/日
というのは、かなり現実的なラインだと思う。
700万 ÷ 300 ≒ 約23,000店舗
700万 ÷ 200 ≒ 約35,000店舗
この時点で、
「数万軒」という単位が見え始める。
街の密度を思い出しても、
そこまで大げさには感じない。

年収と「ドリンクへの支出」から考える
次は、
人ではなく「お金」の流れから考えてみる。
ドリンク店の前で立ち止まってみると、
価格帯はだいたい決まっている。
安いもので40元台、
定番が60〜80元、
トッピングを足すと100元を超える。
毎日買う人もいれば、
週に数回という人もいる。
だが、
「まったく使わない」という層は、
それほど多くなさそうだ。
台湾の平均年収は、概算で70万元(約350万円)。
年間でドリンクにいくら使っているかを考える。
仮に、
年間1万元と置いてみる。
1杯60〜80元として、
年間150〜200杯。
生産人口が全人口の半分と仮定すると
人口2,300万人 ÷ 2 × 年200杯
= 年間 約9億杯。
ここから、
今度は店側の処理能力を考える。
小規模な個人店なら、
年間5万杯。
チェーンの中規模店なら、
10万杯程度。
とすると、
9億 ÷ 10万 = 約9,000店舗
9億 ÷ 5万 = 約18,000店舗
先ほどの推定と、
そこまで大きく外れていない。
いくつかの推定を重ねてみると
人口ベースでは、
2万〜3万軒。
支出ベースでは、
1万〜2万軒。
方法は違っても、
数字はだいたい同じ範囲に収束していく。
おそらく台湾には、
1万台後半〜2万台前半
くらいのドリンク店があるのだと思う。
どこを歩いても目に入る理由としては、
ちょうどいい数字だ。
明確な結論というより、
「たぶんこの辺だろう」という感覚。
その曖昧さも含めて、
台湾の街にはよく似合っている。
通りの向こうから紅茶の香りが流れてきて、
今回は、そういうところに落ち着くことにした。
追記:答え合わせ
台湾財政部の資料によると、
台湾のドリンク店は 約28,000軒 らしい。
ちなみに、
台湾全土のコンビニエンスストアは
およそ 12,000軒前後 とされている。
つまり、
ドリンク店はコンビニの 2倍以上 存在していることになる。
歩いているときに感じた
「あ、またある」という感覚は、
気のせいではなかったようだ。
街の密度は、
数字にしてみても、やはり異常だった。
今回は、そういうことにしておこう。



