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八方雲集(バーファンユンジ)についての記録|台湾のチェーン店

台湾の街を歩いていると、
セブンイレブンと同じくらいの頻度で、黄色と赤の看板に出会う。

「八方雲集」。

観光名所ではない。
行列ができる名店でもない。
だが、昼時になると、学生、会社員、主婦が吸い寄せられるように入っていく。

ここは「餃子専門店」というより、
台湾人にとっての第二の台所に近い。

日本で言えば餃子の王将に似ているが、
もっと生活に密着している。
腹が減ったら考えずに入る場所。
財布の中身と相談しながら、その日の燃料を補給する場所だ。


「鍋貼」は閉じない

八方雲集の看板メニューは「鍋貼(グオティエ)」、焼き餃子だ。

ただし、日本の焼き餃子とは形がまったく違う。

日本の餃子は、
半月型で、皮は薄く、
中の肉汁を逃がさないよう口をきっちり閉じる

一方、八方雲集の鍋貼は、

細長い棒状
両端が開いたまま
まるで閉じる気がない

最初は少し戸惑う。
「これは失敗作なのか?」とさえ思う。

だが、これは意図された形だ。

口が開いていることで火の通りが早く、
厚めでもちもちした皮(いわゆるQ食感)と、
鉄板で焼かれたパリッとした底面の対比を楽しむ設計になっている。

肉汁を閉じ込める料理ではない。
肉そのものの味と、皮の食感を噛みしめる餃子だ。


「個数」で頼むという自由

八方雲集でもう一つ特徴的なのが、注文単位だ。

日本では「一人前・6個」といったセットが基本だが、
台湾では**1個単位(顆)**で頼む。

伝票に数字を書く。

「5」
「12」

それだけでいい。

しかも味を混ぜるのが当たり前だ。

招牌(ノーマル)を5個
キムチを3個
カレーを2個

合計10個。

腹の減り具合に合わせて、
微調整する感覚が心地いい。

1個6〜7元。
小銭を握りしめて、必要な分だけ買う。

この柔軟さこそ、
台湾の食堂文化らしい合理主義だ。


酸辣湯という相棒

台湾人は、餃子だけを食べない。

必ず汁物をつける。

八方雲集で最も選ばれるのは、
酸辣湯(スァンラータン)。

具だくさんで、とろみがあり、
酸味がしっかり効いている。

餃子の油を、
この酸味で流し込む。

この往復運動があって初めて、
一食として完成する。

甘い豆漿(豆乳)を合わせる人も多い。
餃子にコーラではなく、餃子に豆乳。

ここにも、台湾の食卓の感覚が表れている。


毎日食べるための進化

八方雲集の餃子は、
中身だけでなく皮の色から違う。

黄色い皮のカレー味
赤い皮のキムチ味

もはや定番だ。

中でも目を引くのが、
トウモロコシ(玉米)。

甘みが強く、
子どもや女性に人気がある。

毎日食べても飽きないのは、
この選択肢の多さがあるからだ。

餃子を「完成された一品」にしない。
日用品としてアップデートし続けている。


6. 空気のような存在

八方雲集は、特別なご馳走ではない。

感動する100点の料理でもない。
だが、いつでもどこでも、
変わらない80点を出し続ける。

それが、この店の強さだ。

台湾旅行中、
有名店に行くのに少し疲れたら、
黄色い看板を見つけて入ってみてほしい。

そこには、
観光ではない台湾の「いつもの昼ごはん」がある。


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