──新しい線路と昔ながらの市場がある通り──
台中MRTはまだ街に馴染みきっていないように見える。
文心中清駅を出ても、人の波はできない。
空間の余白だけが先に広がっていて、
路線の新しさがそのまま残っている。
そこから少し歩くと、
ローカル食堂が連なる通りに出る。
派手な建物はなく、
生活の延長のような店が並んでいる。
その一角に、蒸心手工小籠湯包がある。
通りに開いた入口の前で、
蒸気だけが一定のリズムで立ち上がっている。
手包みの風景
店の外観は目立たない。
大きな看板もない。
イートインスペースはあるが、テイクアウトの客が多い。
店内で食べる場合も、
紙箱と紙コップで提供される。
テーブルのすぐ横では、
店員が小籠包の皮を一つずつ包んでいる。
作業は止まらない。
注文と同時に、蒸気と作業の音が重なる。
客の多くは地元の人のようで、
声も動きも落ち着いている。
観光地というより、
いつもの昼の場所に近い。
小籠湯包という呼び方
台湾では、本来「小籠湯包」という呼び方の方が古いらしい。
「小籠包」は鼎泰豊の広がりとともに定着したとも言われるが、
いまはどちらでも普通に通じる。
ここでは、店の名前通り「小籠湯包」。
頼んだのは鮮肉湯包とコーンスープ。
最近よく見る「肉汁タプタプ系」の流れにあるが、
ここのは少し様子が違う。
肉汁はたしかに多いが、
意外とあっさりしている。
一口目で広がるけれど、
しつこく残らない。
食べ進めても、
途中でペースが落ちにくい。
肉汁タプタプ系は途中で飽きることもあるが、
ここではその感覚があまり出てこない。
量よりもバランスに寄せているように見える。
水湳市場と、その周辺
店の近くには、水湳市場がある。
観光地化された市場ではなく、
いまも地域の生活に寄り添っている市場だ。
野菜、総菜、肉、魚。
どれも観光向けの顔をしていない。
蒸心手工小籠湯包は、
その延長線上にあるような場所にある。
市場だけでもなく、
飲食店だけでもなく、
周辺の生活リズムに組み込まれている。
台中の住宅地側の空気の中で、
静かに続いている店に見える。
小籠包とそのあと
肉汁の量に関係なく、
ここの小籠包はかなり熱い。
噛み方を誤ると、
口の中というより、唇や舌先に当たる。
少し冷ますか、
端を小さくかじってからが無難だ。
売り切れたら、そのまま店じまいになる。
夜に行く場合は、
少し早めの時間のほうがいい。
思っているより早く閉まっていることがある。
外に出ると、空気はもう普通だった。
通りにはいつもの音が戻り、
店の気配はすぐに薄れていった。
食後の感覚だけが、少しの間、続いていた。
住所: 台中市北屯區北平路三段13號
営業時間: 11:00〜21:00(ただし売り切れ次第終了)
アクセス: 台中MRT文心中清駅から徒歩約12分。
地図: https://maps.app.goo.gl/hX6KbzXU9iaNxAm78
箸やレンゲはセルフサービス。
生姜は小籠包と一緒に紙箱に入って出てくるから慌てない。
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