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台湾の朝食が「何でもあり」な理由についての記録

朝の台湾で、よくある光景がある。
小さな朝食屋に入り、蛋餅(ダンピン)と飯糰(ファントァン)を頼む。
鉄板の上で卵が割られ、生地が流され、隣では油條が温め直されている。

ふと顔を上げると、壁のメニューが目に入る。
ハンバーガー。大根餅。サンドイッチ。豆乳。紅茶。コーヒー。

蛋餅を食べながら、少しだけ違和感を覚える。
なぜ台湾の朝食は、こんなにも節操がないのだろうか。


ハンバーガーと大根餅が同居する理由

台湾の朝食屋のメニューは、初見だと戸惑う。
洋風のハンバーガーの隣に中華風の大根餅があり、その横に台湾独自のダンピンが並ぶ。

飲み物も同じだ。
コーヒーと紅茶と豆乳が、同じ段に配置されている。

ジャンル分けはされていない。
統一感もない。
選ぶ側にとっては、親切とは言いがたい構成だ。

それでも、この並びは台湾ではごく自然なものとして受け入れられている。


積み重なった食文化の地層

この雑多さは、思いつきではない。
台湾という場所が辿ってきた歴史の結果だ。

もともとあったのは、米を中心とした食事。
粥やビーフンといった、軽く胃に入るもの。

そこに、大陸から渡ってきた人々の小麦文化が加わる。
饅頭や燒餅、油條といった粉ものが朝食に定着した。

さらに時代が進み、小麦援助や西洋文化の影響で、パンやサンドイッチが入り込む。

新しいものが来ても、古いものは消えなかった。
排除ではなく、上書きでもなく、ただ横に並べられてきた。

その結果が、あのメニュー表だ。


すべては「鉄板一枚」で完結する

では、あれだけの品数を、どうやって回しているのか。
答えは、厨房を見ればすぐに分かる。

中心にあるのは、大きな鉄板が一枚だけだ。

ハンバーガーのパティも、目玉焼きも、大根餅も、蛋餅も。
調理法はすべて同じ。焼くだけ。

煮る鍋も、蒸し器も、オーブンも必要ない。
鉄板の温度と配置を変えるだけで、あらゆる注文を処理できる。

メニューは多いが、工程は少ない。
この一点に、台湾の朝食屋の合理性が集約されている。


混沌を成立させる規律

台湾の朝食は、何でもありに見える。
だが実際には、「鉄板で焼けるもの」という無言のルールに支えられている。

だから朝のピークタイムでも、店は止まらない。
おばちゃんは鉄板の上を区画整理するように使い、黙々と焼き続ける。

蛋餅を食べ終え、飯糰の油を紙で拭き取る。
その間にも、次の注文が鉄板に滑り込む。

混沌は、放置されているわけではない。
きちんと管理されている。

台湾の朝食は、見た目ほど自由ではない。
そして、その不自由さが、毎朝を支えている。


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