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台北・中正区 黄龍荘についての記録

店の前に立つと、まず静かだ。

永康街の喧騒とも、迪化街の忙しさとも違う、
住宅地に近い牯嶺街の空気がそのまま残っている。

ここは 黃龍莊
創業は30年以上前。
地元では「鼎泰豊から独立した職人が始めた店」として知られている。

真偽はもう確認のしようはない。
けれど、この店の小籠包を口にすると、
その“噂”が完全な作り話ではないことだけは、なんとなく分かってくる。


牯嶺街という場所

この店がある牯嶺街は、
かつては古本屋街として知られていたエリアで、
いまも観光客よりも地元の人の生活が色濃く残っている。

永康街のようにたまたま通りがかる場所ではない。
ここに来るのは、たいてい目的を持った人だけだ。

だから、客層も少し違う。
観光ガイド片手の人は少なく、
近所の常連と、わざわざ足を運んできた台湾好きが混じっている。


鼎泰豊の遺伝子

ここですぐ出てくるのが、あの噂だ。

「ここの店主は、元・鼎泰豊の職人だった」

何度も書かれている話だし、
おそらく店側が積極的に広めているものでもない。

確証はない。
ただ、この小籠包の作りには、
確かにあの系譜の空気がある。

薄くて、均一。
きれいに揃ったヒダ。
ただし、完璧に寄せ切っていない。

鼎泰豊の「完成された工芸品」に対して、
黃龍莊のそれは、少しだけ人間の手触りが残っている


小籠包は薄皮だが、安心感がある

皮は薄い。
系譜としては完全に鼎泰豊寄りだ。

ただ、本家ほど神経質ではない。

箸で持ち上げても破れにくく、
初心者でも扱いやすい強さがある。

これは技術の劣化ではなく、
「日常で食べられる小籠包」に寄せた設計に見える。

スープはたっぷり。
味付けはやや濃いめで、醤油の輪郭がはっきりしている。

これは、
飲み物としての小籠包ではなく、
ご飯のおかずになる小籠包だと感じる。

鼎泰豊が香水なら、
黃龍莊は少し塩気のあるスープ。


隠れた主役:菜肉餃

ここでぜひ頼んでほしいのが、菜肉餃

小籠包が肉の世界なら、
これは野菜の世界だ。

中に入っているのは、
一般的な雪菜ではなく、細かく刻まれた青江菜。

シャキッとした食感が少しだけ残り、
豚肉の脂と合わさって、重くなりすぎない。

小籠包の合間にこれを挟むと、
口の中がきれいにリセットされる。

観光客は小籠包を頼み、
常連はこの菜肉餃も一緒に頼む。

そんな構図が、ここでは自然に成立している。


観光地ではなく、生活の側の店

黃龍莊は、
鼎泰豊のコピーでも、代替でもない。

むしろ、
鼎泰豊がブランドになる前の時間を、少しだけ残している店に近い。

観光地の中心ではない。
行列も、過剰な演出もない。
地元の生活の流れの中に、静かに組み込まれている。

薄皮の技術。
肉汁の設計。
蒸しの精度。
その基礎は確かに、同じ地層にある。

ただしこちらは、
もう少し人の生活に近い場所で、
もう少し乱れたリズムで、それらを続けている。

だからここは、
「鼎泰豊に行けなかった人の代わりの店」ではない。
「鼎泰豊を知ったあとに戻ってくる場所」だ。

永康街でもなく、中山でもなく、
ならば一度だけ、牯嶺街まで歩いてみてもいい。


黄龍荘

住所: 100台北市中正區牯嶺街43號

営業時間: 10:00 – 20:00 (月曜定休)

アクセス: MRT中正紀念堂駅 2番出口から徒歩約5分。牯嶺街の静かな通り沿い。

地図https://maps.app.goo.gl/YL1wLNwE6Qv4shYC6

店主は元・鼎泰豊の職人という噂がある。小籠包は食べ応えのある「厚皮」タイプ。鮮やかな緑色の「菜肉餃(野菜蒸し餃子)」も隠れた名物。


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