―― 夜に思い出す小籠包 ――
夜になると、
ときどき思い出す店がある。
お腹が空いたというより、
ただ少し落ち着きたくなったときに思い出す。
新北市・三重。
台北市を流れる川を越えた先にある、ごく普通の住宅街だ。
観光客が来る街ではない。
バイクがひっきりなしに行きかう。
そんな場所に、この「小上海」はある。
三重という場所
三重は、台北の隣にある街だが、
空気はまるで違う。
背の高いビルは少なく、
代わりに、古いマンションと小さな商店が続く。
昼は働く人の街。
夜はバイクと屋台の街。
少し雑で、少しあたたかい感じが、
この店の空気とも重なっている。
深夜の「居場所」
この店のいちばんの価値は、
遅くまで開いていることだと思う。
夜10時、11時、
下手をすると日付が変わる頃でも、
ここには蒸気が立っている。
観光地の人気店は、夜になるともう閉まっている。
でもここには、まだ湯気があり、人がいる。
「夜中にふらっと行きたくなる」という感覚は、
味というより、存在そのものに対してなんだと思う。
小さい、小籠包
ここの小籠包は、少し小さい。
ひと口サイズで、
箸で持ち上げるというより、つまむ感覚に近い。
皮は少し厚めで、安心感がある。
肉汁は派手じゃないけれど、ちゃんとある。
重くない。
気取っていない。
夜の空腹にちょうどいい密度。
名店の味ではなく、
いつもの味に近い。
だからこそ、
気づくとまた食べたくなる。
もうひとつの「小上海」
台北・民生社区にも「小上海」という店がある。
あちらが
住宅街の昼の小上海なら、
ここは
下町の夜の小上海だと思う。
同じ名前でも、
役割が違う。
この店は、ブランドではなく地名でもなく、
もっと曖昧な「気配」で存在している。
だからこそ、残る。
観光地ではなく、生活の店
ここは、わざわざ出かけて行く店ではない。
けれど、
近くに住んでいたら、きっと通う店だと思う。
仕事終わりに。
飲んだ帰りに。
何もしたくない夜に。
そんなとき、
この小籠包は、ちょうどよくそこにある。
三重の夜に、
この店は溶けている。
住所241: 新北市三重區國震街11號
営業時間: 12:00 – 24:00 (無休)
アクセス: MRT台北橋駅または三重国小駅から徒歩約10分。三和夜市の近く。
地図: https://maps.app.goo.gl/5GrD9xkquHxMqcxk6
台北の中心部から少し離れた下町、三重にある人気店。小ぶりなサイズで食べやすく、深夜まで営業。
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