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高雄・塩埕区 永和小籠湯包についての記録

MRT鹽埕埔駅を出て、古い商店街を抜ける。
小さな寺、古い金物屋、シャッターの錆びた質感。
そんな風景の奥に、白いテントと湯気が揺らいでいる。

永和小籠湯包。
なぜか日本人に一番知られている高雄の小籠包店である。

店の「建物」は存在しない。
路地裏にテーブルを並べただけの、空に開かれた食卓。
スクーターの風が頬を撫で、隣の客の話し声がそのまま街に溶けていく。

台湾を好きになった理由を、改めて思い出させてくれる場所だ。


路地の風と一体化した食卓

永和小籠湯包には、ドアも壁もない。
テントを張り、調理台とテーブルを数脚置いただけの空間。

文字通り「台湾の片隅」で、
料理が出てくるのも、風が吹くのも、
街そのものの呼吸に乗っている。

スクーターが横をかすめ、
湯気が風に流され、
知らない人同士が、同じ路地で同じ匂いを吸い込む。

それが、都市とシームレスにつながった食卓の感覚。


メニューは3つ

永和のメニューは驚くほど少ない。

  • 小籠湯包
  • 酸辣湯
  • 猪血湯

以上、3つ。

「あれもこれも」はない。
40年以上、この3つだけで勝負してきた。

親父さんが客の目の前で皮を伸ばし、餡を包む。
ステンレス台に粉が舞い、腕の動きは止まらない。

ガラス越しのショーではない。
汗も、小麦粉も、手の動きも、全部が近い。

一歩も引かない職人の距離感が、かえって心地よい。


塩埕区の歴史を引きずったままの湯気

塩埕区は、かつて高雄の中心地だった場所。

時代が動き、商圏は三多や高雄駅周辺へ移った。
新しいタピオカ店が増えては消え、
古い店の看板だけが風にさらされている。

そんなエリアで、永和は40年間変わらない。
大改装もしない。
宣伝もしない。
ただ黙々と、湯気を上げ続けている。

観光地化の波が来ても、流行りの味が溢れても、
ここだけは「時間の速度」が違う。


南部の湯包。重さと甘さのある一口

永和の湯包を持ち上げると、
まずその重みに驚く。

皮は薄いのに、中はタプタプ。
スープの量は多めで、レンゲがないと事故る。

肉餡は少し甘い。
南部特有のやさしい味の方向性で、
スープの旨味とよく馴染んでいる。

鼎泰豊のような洗練ではなく、
生活の中で磨かれた「路地の味」。

観光グルメではなく、
「街の温度をそのまま食べている」感覚に近い。


猪血湯との相性こそが、この店の作法

台湾の小籠包屋で、猪血湯(豚血スープ)を置く店は少ない。

永和では、これが標準装備。
湯包の甘みと、猪血湯の野性味がちょうどいい。

これを美味しいと思えるかどうかが、
観光客と地元民の分岐点だと思う。

鼎泰豊の「鶏スープ」とは真逆の世界。
でも、この店では猪血湯の方がしっくりくる。


なぜここが日本人に刺さるのか

永和小籠包はやたらと日本で紹介される。

テレビのロケ、ガイドブック、SNSの投稿。
高雄の湯包といえば、なぜか真っ先に名前が挙がる。

理由は単純だと思う。

「台湾の原風景」への期待値を、
最もストレートに満たしてくれるから。

壁もない。
エアコンもない。
路上のテーブルで食べる湯包。
湯気の中で聞こえるスクーターの音。

観光向けのキレイさではなく、
雑味のある日常がそこにある。

日本人が“台湾っぽさ”として思い描く感覚が、
ここでは一口目からそのまま体験できる。

永和小籠湯包

住所: 高雄市鹽埕區鹽埕街33號

営業時間: 11:00 – 20:00(中休みなし、売り切れ次第終了の可能性あり)

アクセス: MRT鹽埕埔駅から徒歩数分。細い路地を入ったところ。

地図https://maps.app.goo.gl/4Z31BThniqX9JNSx9

住所は「33号」だが、実体は「33号の前の路上」だ。


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