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台中・中区 李海魯肉飯についての記録

台中・第二市場は、朝と昼に最も活気が出る場所だ。
多くの店は午後になると看板を下ろし、通路はしんと静まっていく。

その時間帯に、逆方向から灯りがともる。
夕方から深夜まで営業する李海魯肉飯だ。
市場の昼と夜を分け合う“もう半分”の存在である。

通路の奥で明かりが一か所だけ浮かんで見える。
人が吸い寄せられるように集まっていく。
第二市場が夜の顔に切り替わる瞬間だった。

昼の山河、夜の李海

第二市場には有名な「山河魯肉飯」がある。
あちらは朝5時半から昼過ぎまで。
山河が市場の朝と昼を担当するなら、李海はその続きの時間帯を引き受けている。

時間帯だけでなく、味の方向性も対照的だ。
山河がバランス重視の穏やかな味なら、李海は濃く、重さがある。
深夜の空気に寄り添うような味つけだった。

台中式「控肉飯」としての一杯

ここで魯肉飯と注文すると、そぼろではなく、角煮が出てくる。
台中では角煮丼が魯肉飯の主流だ。
皮つきの三層肉(バラ)か、赤身中心の脚庫(モモ)かを選べることも多い。

深夜に見る角煮の脂身は、照りが強く、湯気の奥で静かに揺れていた。
背徳感のある一杯だが、箸で割ると驚くほど柔らかい。
脂の甘さと醤油の塩気が、ご飯と強く絡む。
重さがあるのに、妙にしつこくない。
長く煮込んだ老舗の火加減がそのまま出ていた。

周りを見ると、常連らしき客は迷わず「肥肉」とだけ告げていた。
夜の市場で食べる角煮は、それだけで小さな儀式のようだった。

冬粉肉圓というもう一つの名物

李海には、角煮と並んで人気のサイドがある。
冬粉肉圓湯。
透明なスープに春雨が入り、大きな肉団子が沈んでいる。

濃厚な角煮の後、この淡いスープを飲むとバランスが戻る。
脂を流し込み、もう一口食べたい気持ちをつくる役割をしている。
市場の食堂らしい、計算されていない調和が心地よかった。

深夜の市場で生まれる風景

第二市場は昼の喧騒が消えると、広い空間に湿った静けさが戻る。
その中で、李海だけが湯気と声を出し続けている。

客層は昼とは違う。
仕事帰りの人、バイクで滑り込む若い客、夜の街を歩いた後の小さなグループ。
それぞれの一日の終わりが、この店に流れ込んでいた。

テーブルは簡素で、厨房もむき出しだ。
特別な演出はない。
ただ、深夜の市場で食べる角煮丼は、それだけで十分だった。

昼と夜を受け継ぐ市場のリズム

同じ市場で、山河と李海が“昼と夜”を分け合っている。
昼に山河を訪れ、夜に李海へ向かうと、市場の一日の流れが丸ごと見える。

台中式魯肉飯の角煮文化。
深夜に灯り続ける食堂。
市場が昼夜で変わる空気の質。

李海魯肉飯は、派手さこそないが、その全部を静かに受け止めている。

深夜の第二市場で角煮を食べ終えると、外の空気は少し冷えていた。
市場の灯りが後ろで淡く揺れていた。


李海魯肉飯

住所: 400台中市中區三民路二段85號(第二市場内98攤位)

営業時間: 16:00 – 03:00 (水曜定休)

アクセス: 台中駅から徒歩約10〜15分。第二市場の夜営業エリア。

地図https://maps.app.goo.gl/Ny3gjMNyww8TfNHbA

第二市場の夜の顔。魯肉飯は角煮タイプで、脂身の量が選べる。深夜まで営業しており、夜食に最適。


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