―― 台北・ビジネス街に残る蚵仔煎の名店 ――
遼寧街夜市の中ほど。
夕方になると、鉄板の前に人だかりができる。
ここが 勝利號蚵仔煎。
創業30年以上、地元では「大王(だーわん)」の愛称で呼ばれることもある、夜市の看板屋台だ。
鉄板の上の「お好み焼き感」
ここの蚵仔煎は、最初の一瞬で印象が決まる。
鉄板に流した卵を、
店員がヘラですばやく広げ、しっかり焼きつける。
この「焼き切る」工程のおかげで、
表面には香ばしい焦げ目がつき、
日本の屋台の“お好み焼き”を思わせる匂いが立つ。
外側はカリッ、中はサツマイモ粉のモチモチ(QQ)。
食感のコントラストが気持ちいい。
「あとマヨネーズさえあれば完全にお好み焼きだ」
──そんな感覚を覚える一皿。
牡蠣の鮮度と量
牡蠣は、嘉義・東石から直送されるもの。
粒は大きめでぷるっとしている。
甘いソースに負けず、
牡蠣本来のうま味がしっかり立つ。
生地・牡蠣・卵・ソース。
夜市らしいシンプルな構成なのに、
一つひとつの素材が丁寧に扱われている。
ビジネス街の「露店食堂」
遼寧街夜市は、
饒河や士林のような観光夜市とは違い、
会社帰りのサラリーマンが立ち寄る生活夜市だ。
スーツ姿の人たちが道路ギリギリのテーブルに座り、
無言でオムレツをつついていく。
派手さはないが、
「仕事終わりの一皿」としての説得力がある。
これは観光グルメではなく、
都市の労働者を支える晩酌のつまみなのだと思う。
魯肉飯の実力
勝利號は、蚵仔煎だけの店ではない。
魯肉飯が意外にうまい。
北部らしいそぼろタイプで、
味付けは軽め。
オムレツの甘いタレで口が疲れたときの、
「塩気のリセット」にちょうどいい。
空心菜炒めと合わせる人も多く、
夜市の食卓としてはバランスがとても良い。
隠れた名物「スープ(湯)」
サイドメニューはスープが充実している。
- 猪血湯(豚の血のスープ)
- 肝連湯(豚横隔膜のスープ)
どちらも、奇をてらわない台湾らしい味。
モチモチ+甘いタレという重たい蚵仔煎を、
このさっぱり系スープがうまく中和してくれる。
仕事帰りの胃袋を整える一杯。
夜市というより「屋台の定食屋」に近い感覚だ。
遼寧街夜市の中での役割
遼寧街夜市は、
派手ではないが密度が高い。
勝利號蚵仔煎はその中でも、
「帰宅途中に寄る一皿」を象徴する店だ。
鉄板の音、焼けた卵の匂い、
オフィス街の雑踏、スクーターの排気。
そのすべてが重なって、
ここだけの味になる。
住所: 104台北市中山區遼寧街65號の向かい
営業時間: 17:00 – 22:00 (無休) ※要確認
アクセス: MRT南京復興駅 2番出口から徒歩約5〜8分。遼寧街夜市の中ほど。
地図: https://maps.app.goo.gl/S6pVdg6G2GDkTqZG8
卵の焼き目が香ばしい、クリスピー寄りのオムレツ。魯肉飯も隠れた人気メニュー。道路沿いの席で食べる開放感が魅力。
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