―― 台北101の足元にある、日常の夜市 ――
信義安和駅を出て数分歩くと、静かな住宅街の中に人だかりが現れる。
臨江街観光夜市。通化街夜市とも呼ばれ、一本の通りだけで構成された小さな夜市だ。
台北101からも近く、摩天楼の光がそのまま夜市の上を照らす。
高層ビルと屋台の煙が同じフレームに収まる、この都市らしい対比がまず印象に残る。
一本道の夜市というわかりやすさ
臨江街夜市は、一本道だ。
寧夏夜市と同じく、脇に迷い込む路地がほとんどない。
端から端まで歩けば、すべてを見て回れる。
初めて台北に来た人にも負担がなく、
「歩いて把握できる夜市」としての位置づけがはっきりしている。
18時を過ぎると屋台の明かりがそろいはじめ、深夜2時近くまで続く。
大規模ではないが、夜の食の需要をきちんと満たす構成になっている。
台北101の影が落ちる屋台街
この夜市の特徴は、すぐ頭上に巨大なランドマークがあることだ。
路地から見上げると、台北101が大きく抜ける。
夜市と超高層ビルが隣り合う地域は、台北でもそう多くない。
臨江街は「観光」と「生活」の境界が曖昧な場所で、
それが風景に独特の密度を作っている。
食べるべき店と屋台
臨江街の屋台は観光向けではない。
地元民の夕飯、帰宅前の一皿、小腹を満たす軽食。
この用途に最適化されている。
いくつか、流れを作る屋台がある。
梁記滷味
ミシュラン・ビブグルマン。
滷味(ルーウェイ)の名店で、行列が途切れない。
具材を選び、煮汁で温めてもらうだけの料理だが、味は安定している。
御品元冰火湯圓
こちらもミシュラン。
熱いゴマ団子を、冷やしたカキ氷に落として食べる「冰火」スタイル。
桂花の香りが静かに残る。
紅花麻辣鹽水雞
塩水鶏の屋台。
冷たい鶏肉と野菜を和えた料理で、夜食に向く軽さがある。
これらの屋台は夜市の性格を象徴している。
「映える料理」ではなく、生活の延長としての夜の食事が中心にある。
家具街との共存という風景
昼間の通化街は家具街だ。
ソファ、木製家具、寝具の店が並ぶ。
同じ通りが、夜になると屋台の通りへ変わる。
家具店のシャッター前に屋台が出るという構造が、この夜市の特徴でもある。
店舗と屋台が時間帯で役割分担し、
同じ空間を異なる用途で共有している。
臨江街の夜市は、この「二重構造」の上に成り立っている。
観光夜市ではなく、“生活夜市”
士林のようなテーマパーク型の夜市と比べると、
臨江街は静かで、密度が低く、肩肘を張らない雰囲気がある。
観光客もいるが、住民が歩いて夕飯を買い、
会社員がスーツのまま滷味を袋に詰めてもらって帰る姿が多い。
観光資源でありながら、
「地元の食生活の延長」という役割が強い夜市だ。
一本道の裏は住宅街
屋台の明かりを離れ、一本裏へ入ると、
すぐに静かな住宅街が戻ってくる。
台北101の光は遠くまで届いているが、
その足元には、こうした小さな夜市が粘り強く残っている。
臨江街夜市は、大きくはない。
派手でもない。
けれど、この都市の夜の生活を支える確かな一部だと思う。
住所: 106台北市大安區臨江街
営業時間: 18:00 – 24:00 (店舗により異なる)
アクセス: MRT信義安和駅から徒歩約5分。台北101からも徒歩圏内(約15分)。
地図: https://maps.app.goo.gl/Y9fQFVUoHKswBuPX7
台北101に近い都会の夜市。「御品元」の氷火湯圓や「梁記」の滷味など、ミシュラン掲載店が点在する。
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