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燒餅 × 油條|台湾の朝の炭水化物ペアについての記録

台湾の朝食屋で最も基本的な組み合わせがある。
焼いたパンに、揚げたパンを挟む。

燒餅(シャオビン) × 油條(ヨウティアオ)

日本人の感覚では、「パンにパンを挟む」という不可解な構造に見える。
炭水化物に、さらに炭水化物。理性が一度、思考を止める。

だが台湾では、これは奇抜な料理ではない。
朝食屋における標準模型であり、白飯と味噌汁のような「前提条件」に近い存在だ。

なぜ挟むのか

これは単なる満腹装置ではない。
明確な食感設計がある。

外壁を担うのが、燒餅
層を重ねて焼かれた生地は、噛むとパラパラと崩れる。
油を含みながらも乾いた、軽い脆さ。
口の中で層がほどけ、小麦の甘みが立ち上がる。

内芯を担うのが、油條
中空構造を持つ揚げパンは、弾力のあるサクサク感を生む。
噛み締めるたびに、油のコクがゆっくり滲み出す。

この二つの異なる「サクサク」が重なることで、
燒餅油條は成立する。

乾いた脆さと、空気を含んだ脆さ。
対照的なテクスチャーが、口の中で合流する。

一套と半套

注文時に知っておくべき概念がある。
それが量の単位だ。

一套(イータオ)
燒餅1つに、油條2本(連結された1対)を折りたたんで挟む。
厚みは異常。顎の可動域が試される。
体力仕事を控えた人向けの仕様。

半套(バンタオ)
燒餅1つに、油條1本のみ。
食感と満足感のバランスが良く、現代人の標準はこちらになりつつある。

観察すると、通勤客の多い店ほど「半套」がよく出る。

豆漿という存在

燒餅油條は、水分を極限まで削ぎ落とした食べ物だ。
そのまま食べ続けると、口内の湿度が急激に失われる。

そこで不可欠になるのが、豆漿(豆乳)

交互に飲むことで口内を潤す。
あるいは、燒餅油條を大胆に豆漿へ浸す。
油を吸った生地が柔らかくなり、味が完成する。

燒餅、油條、豆漿。
この三点が揃って、初めて朝食として機能する。

12時までの燃料

燒餅油條は、消化に時間がかかる。
腹持ちは極めて良い。

これを朝に入れておけば、昼過ぎまで空腹は訪れない。
肉体労働者にも、デスクワーカーにも等しく効く。

台湾の午前中は、この組み合わせによって支えられている。
静かだが、確実なエネルギー供給装置。

街の片隅で、今日もまた燒餅が割られ、油條が挟まれていく。

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■ 台湾の朝食屋(網羅的な解説)


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