—— 24時間の「入れ替わる夜市」と晴光市場の風景 ――
台北・中山区の北端に、少し変わった夜市がある。
雙城街夜市。
規模こそ大きくないが、「朝〜昼」「夕方〜深夜」で店が入れ替わる、台北でも珍しい“二毛作の夜市”だ。
晴光市場の裏手にある細い通り。
屋台とアーケード市場が十字に交わり、昼と夜でまったく違う表情を見せる。
観光夜市というより、生活の延長線にある「都市の食堂」に近い場所だ。
昼と夜の交代劇
雙城街夜市を語るなら、まずこの仕組みを押さえておきたい。
昼は、会社員のランチスポットとして機能する。
晴光市場で買い物をする人、近所の住民、病院のスタッフ。
整然と並んだテーブルで、水餃子や麺をすっと食べて立ち去る。
日が落ちると、屋台が入れ替わる。
同じ通りなのに、まったく違う環境が立ち上がる。
小吃が増え、揚げ物の匂いが強まり、椅子の並びも夜仕様に変わる。
「24時間開いている夜市」に見えるのは、この昼夜交代制のためだ。
同じ場所を、時間帯で使い分ける都市の工夫がそのまま現れている。
晴光市場という“母体”
雙城街夜市を歩くと、すぐ横にアーケードが続いている。
晴光市場。
店の密度が高く、昔ながらの商店と新しい小店が混じり合う。
かつては舶来品の中心地だったといわれる。
今は、野菜、惣菜、ドーナツ、鶏排、雑貨まで並ぶ生活市場だ。
この市場があることで、雙城街夜市は“夜市”と“昼の市場”を繋ぐ存在になっている。
屋根付きの空間と、露天の夜市が段差なく続く。
境界が曖昧で、街の機能が折り重なる。
これが雙城街夜市特有の“ごちゃっとした居心地の良さ”をつくっている。
必食の三つ
雙城街夜市の食べ物は、派手さよりも実用性がある。
なかでも印象に残りやすいのがこの三つだ。
鴻水餃牛肉麺の水餃子
皮は薄めで、ニラの香りがしっかり立つ。
昼でも夜でも並ぶ屋台で、食事として頼る人が多い。
脆皮鮮奶甜甜圈(ドーナツ)
晴光市場の名物。
揚げたては外がカリッとし、中はふわっと甘い。
台北で最も有名なドーナツのひとつで、袋を片手に歩く人が多い。
城市愛玉
レモンが強めの愛玉。
油の多い夜市で、この酸味がうれしい。
喉が軽くなる。
食べ歩きだけでなく、食事としての満足度も高いのが雙城街らしい。
「黄記魯肉飯」の裏手として
雙城街夜市は、台北の名店「黄記魯肉飯」のすぐ近くにある。
行列で待つ気力がないとき、
夜市の方へ流れて簡単に食べる人も多い。
観光客にとっても、ローカルにとっても、使い勝手の良い距離感だ。
夜市が「代替案」として強いのは、この立地が大きい。
ローカル夜市としての価値
雙城街夜市は、観光向けの看板や派手な照明は少ない。
その代わり、生活の速度で人が動いている。
昼は市場、夕方は夜市。
食堂、屋台、通り道。
役割が固定されず、街の都合で姿を変える。
「夜市」という言葉から想像するエンタメ性とは少し違う。
都市が動くために必要な食のインフラが、ここには集まっている。
夕方に訪れると、通りの風が少し暖かい。
揚げ物の音と、店員の声と、バイクのエンジン音が混じって流れてくる。
見終わればまた普通の街並みに戻るが、
あの混ざり方の記憶だけは、少し長く残る。
住所: 104台北市中山區雙城街
営業時間: 24時間(昼の部と夜の部で屋台が入れ替わる)
アクセス: MRT中山國小駅 1番出口から徒歩約5分。晴光市場の隣。
地図: https://maps.app.goo.gl/Yhmcc8UtnsrvaRzT9
昼から屋台が出ている珍しい夜市。晴光市場の名物「脆皮鮮奶甜甜圈(ドーナツ)」や「鴻水餃牛肉麺」の水餃子がおすすめ。
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