―― 六合夜市近くの牛肉捲餅と小籠湯包 ――
台湾の街角を歩いていると、
ときどき「北方面食」という看板に出会う。
これは台北のことではない。
指しているのは、中国華北地方の食文化だ。
米ではなく、小麦を主食とする地域。
麺、餅、包子。
腹にたまる粉ものの世界。
高雄という南国のど真ん中で、
あえて「北」を名乗る。
そこにあるのは、
ふわっとした優しさではなく、
小麦の重さと香りだ。
包むのではなく、巻く
この店では小籠包も有名だ。
だが、最初に頼みたいのは牛肉捲餅だと思う。
ネギの香りをまとった生地を焼き、
そこに薄切りの牛肉、キュウリ、甜麺醤をのせる。
包むのではない。
豪快に、巻く。
外側はパリッとしている。
噛み進めると、中はもちっと重い。
牛肉の旨味。
キュウリの水分。
甘辛い味噌。
箸で持ち上げると、ずしりとした重さがある。
これはおかずであり、同時に主食だ。
小麦文化の論理が、
そのまま形になっている。
レンゲの中の洪水
小籠湯包は、見た目からして整いすぎていない。
皮はやや厚めで、手仕事の気配が残っている。
その分、
中に抱え込んでいるスープの量が多い。
箸で持ち上げ、
レンゲの上でそっと破る。
肉汁が流れ出す。
勢いよく、ためらいなく。
針生姜を乗せ、
酢を少し垂らす。
洗練されたチェーン店の小籠包とは違う。
街場の湯包らしい、
野太い旨味が口に広がる。
酸味が、舌を戻す
小麦料理が続くと、
口の中はどうしても重くなる。
そこで酸辣湯を挟む。
胡椒の辛味。
酢の酸味。
とろみのあるスープ。
飲み物というより、
もう一品の料理に近い。
油と炭水化物で鈍った舌を、
一度まっさらに戻してくれる。
粉ものへの渇望を満たす場所
台湾料理は軽い、
という印象がある。
だが、それは一面でしかない。
ここにあるのは、
冬を越えるためのカロリーと熱量だ。
店を出る頃、
腹はずっしりと重い。
その重さは不快ではない。
小麦を食ったという、
はっきりした満足感だ。
住所: 高雄市新興區復横一路262號
営業時間: 11:00~14:00 / 16:30~20:30 (不定休)
アクセス: MRT美麗島駅・信義国小駅から徒歩数分
地図: https://maps.app.goo.gl/nxfvpqK2Z3xqJWAm7
地元客に人気の麺食館。小籠湯包の他に牛肉捲餅がおすすめ。六合夜市からも歩ける距離。

