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日本の片隅
日本・一蘭についての記録
―― 沈黙の建築と、偶然のパスポート ―― 繁華街の一角に、赤い看板が浮かび上がっている。「天然とんこつラーメン」という文字は強いが、周囲の空気は不思議と落ち着いている。屋台街に漂うような濃厚な獣臭はほとんど感じられず、入口の前には静かな列がで... -
日本の片隅
日本・一風堂についての記録
―― ジャズと木目調が解体した聖域 ―― 店の前に立つ。東京でも、ニューヨークでも、パリでも構わない。 最初に感じるのは、匂いではなく、その不在だ。本来、豚骨ラーメンの店に近づけば、鼻を刺すような獣臭が漂うはずだ。 骨を強火で煮続けたときに立ち上... -
日本の片隅
日本・とんこつラーメンの海外展開についての記録
―― ニューヨークで出会う一杯 ―― ニューヨーク、ロンドン、パリ。世界の主要都市で「Ramen」と書かれたメニューを開くと、白濁したスープの写真が並んでいることが多い。 透き通った醤油や、淡い塩ではない。最初から、白い。 日本で育った人間にとっては... -
日本の片隅
日本・とんこつラーメンの歴史についての記録
―― 白濁スープの誕生と進化 ―― 日本の出汁文化では、透明であることが長く価値とされてきた。鰹や昆布から引かれる汁は、澄み切った色を保つ。 初期の醤油ラーメンも、その延長線上にあった。スープは透き通り、底まで見えることが理想とされた。 濁りは、... -
日本の片隅
日本のとんこつラーメンについての記録
―― 世界に広がった白いスープ ―― 博多の街を歩いていると、ある地点から空気の質が変わることがある。半径五十メートルほどの範囲に、独特の獣臭が広がっている。 それは豚骨ラーメンの店の存在を知らせる合図のようでもある。風向きによって濃淡は変わる... -
日本の片隅
日本のラーメンについての記録
―― 世界を侵食する「UMAMI」の正体 ―― 丼が置かれる。 表面には脂の膜が張り、湯気が立っている。スープの色は店によって異なる。澄んだ琥珀色のこともあれば、乳白色に濁っていることもある。麺は沈んでいて、その上にチャーシューと煮卵とネギが乗ってい... -
食文化の記録
台湾の「南甜北鹹」についての記録
―― 砂糖の南、塩気の北 ―― 台北の食堂で、豚肉を煮込んだ汁をご飯にかけた料理を頼む。魯肉飯(ルーローハン)と呼ばれるものだ。同じ料理を、数日後に台南で頼む。こちらでは肉燥飯(ロウザオファン)と呼ぶ。 見た目は似ている。白いご飯の上に、茶色い... -
食文化の記録
1949年以前の台湾の「味」についての記録
―― サツマイモ、福建の塩、蓬莱米 ―― 今日の台北の夜市を歩くと、牛肉麺や小籠包、水餃子の看板が視界に入る。湯気が立ち、麺が茹でられ、蒸籠の蓋が次々と開く。 この風景を、そのまま1949年より前に持っていこうとすると、違和感が生じる。牛肉麺は見当... -
食文化の記録
台湾・ひげ張のサイドメニューについての記録
―― 緻密なアップセルの仕組み ―― 台北の街角に、黄色い看板が立っている。ガラス越しに見える鍋。均一な照明。髭須張魯肉飯(ひげ張)の店先は、屋台の延長線上にありながら、どこか整っている。 看板のいちばん目立つ位置には、魯肉飯(ルーローハン)の... -
食文化の記録
台湾・濁水渓という境界線についての記録
―― 地図に載らない味の国境 ―― 台湾の中部を、東の山脈から西の海へと横切る河川がある。濁水渓(だくすいけい)と呼ばれる。 地図の上では、台湾で最も長い川として描かれているだけだ。一本の線が島を横断しているにすぎない。 だが、島を北から南へ移動...