台湾・蚵仔煎の起源と歴史についての記録
夜市の鉄板では、牡蠣と卵の脇から、半透明の地瓜粉の生地が大きくせり出している。海の具材を使った料理なのに、食べた印象を決めるのはそのモチモチした澱粉と甘いソースだ。
世界の中心ではなく、
その少し外側で見つけた記録。
夜市の鉄板では、牡蠣と卵の脇から、半透明の地瓜粉の生地が大きくせり出している。海の具材を使った料理なのに、食べた印象を決めるのはそのモチモチした澱粉と甘いソースだ。
Jalan TARの色褪せた緑の看板の下で、皿の上では赤や黄色より先に、粘度のある漆黒が立ち上がる。狭い店内では、立場も言葉も違う客が肩を寄せ、同じ重い昼食に手を伸ばしている。
台南の朝食屋では、夜明け前に水揚げされた銀色の魚が、透明なスープの中で静かに湯気を立てている。身の奥には222本もの小骨がありながら、客はそれを気にする様子もなく、白い身をすくって食べていく。
ペナンのナシカンダー店では、白米が見えなくなるほど複数のソースをかける「バンジル」が注文される。料理名には、材料でも地名でもなく、天秤棒で担ぐ動作が残っている。
朝7時の伝統市場では、氷も冷蔵ケースもない台に、解体されたばかりの肉が並んでいる。昼前にはその肉も店先から消え、屠畜場が休む月曜日には市場の精肉店まで静かになる。
ガラスケースの中には、揚げ鶏や羊肉、魚、野菜の鍋が隙間なく並び、注文のたびにその上から黒・赤・黄色のソースが重ねられていく。指差しで選んだ具材は、最後には境目のない茶色い洪水に沈む。
夕方の路地に「エリーゼのために」が流れると、袋を手にした住民が建物の前へ集まってくる。ごみを捨てるために、人が毎週決まった時間を差し出す風景は、台湾の街では珍しくない。
バンコク・ヤワラートの鉄板では、牡蠣料理が砕けるほどのカリカリか、具と液体が溶け合うほどのドロドロに振り切れている。その間で、台湾の蚵仔煎だけが、崩れそうで崩れない粘り気をまとっている。
台湾の街で弁当を買うと、排骨や鶏腿が白飯と副菜とともに、硬い四角い箱へ整然と収まっている。汁物を袋で持ち帰る近隣の都市と比べると、その容器の形だけが妙に揺るがない。