台北MRT環状線計画についての記録
台北MRT環状線の列車は、台北駅にも観光地の中心にも向かわず、マンションの壁が迫る高架を進む。防音壁の切れ目で河川敷や交差点が一瞬見えると、中心から外れた場所を結ぶ路線の輪郭が浮かぶ。
世界の中心ではなく、
その少し外側で見つけた記録。
台北MRT環状線の列車は、台北駅にも観光地の中心にも向かわず、マンションの壁が迫る高架を進む。防音壁の切れ目で河川敷や交差点が一瞬見えると、中心から外れた場所を結ぶ路線の輪郭が浮かぶ。
キャンベルストリートの黄色いショップハウスでは、観光客が入口で足を止める横を、地元の人が慣れた様子で通り過ぎていく。店内に入ると、カレーの匂いに混じって、砕いたスパイスのような鋭い香りが立っている。
高雄・塩埕区の港園牛肉麺に行列が伸びる角を曲がると、同じ「港園」の名を掲げた別の店がある。似た見た目の牛肉拌麺は、ひと口目から少し違う手触りをしている。
ガラスケースの中には、揚げ鶏や羊肉、魚、野菜の鍋が隙間なく並び、注文のたびにその上から黒・赤・黄色のソースが重ねられていく。指差しで選んだ具材は、最後には境目のない茶色い洪水に沈む。
SOGOや新光三越のガラス張りの大通りから一本入ると、百合や菊を積んだ花屋の隣で、臭豆腐と揚げ油の匂いが立ち上っている。贈答用の花束を抱えた人と、仕事帰りに夕飯を買う人が、黒く湿ったアスファルトを行き交う。
マレーシアの街角では、朝から生地を鉄板に叩きつける音が響いている。薄く伸ばして焼かれた何も入っていない円盤を、客は手でちぎり、カレーに浸して食べる。
台北の街を走るYouBikeは、1日に20万回使われている。その一台一台がスクーターの代わりに進む距離を、ガソリンと人間のカロリーで並べてみると、街の移動に別の燃料の流れが見えてくる。
台湾のお粥屋では、レジ横に茶色く細長い油條が積まれ、注文した粥の脇に何気なく添えられている。浸す前は中が空洞でほとんど味のないその棒が、粥の中で少しずつ姿を変えていく。
湯気と油の匂いが混ざる夜市では、プラスチックの椅子に座って食べる一皿が、高級店の料理より強く記憶に残ることがある。屋台の味を支えているものは、皿の上だけには収まっていない。