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台湾の炒飯の当たり外れについての記録

台湾ではよく炒飯を頼んでいた。
ただ、タイに行くようになってから、その頻度は自然と減っていった。
理由は単純で、台湾の炒飯は外れやすい。
一方、バンコクの食堂で出る炒飯は、どこで頼んでも一定の水準に収まる。

この差を追いかけていくと、最後に残るのは「米の性質」と「熱の許容範囲」だった。


タイ米がもたらす安定

タイの炒飯(Khao Pad)の基盤は、長粒種のジャスミンライスだ。
水分が少なく、粒が細く、油を吸い込みにくい。
鍋の中で跳ねても崩れず、火力が多少ぶれても形を保つ。

この揺れない構造が、店ごとの差を小さくしている。
米そのものが安定しているため、
料理人が多少急いでも、油が多くても、仕上がりが大きく崩れない。

タイの炒飯が外れにくい理由は、
技術よりも「米の性質」によるところが大きい。


台湾米は繊細すぎる

台湾の炒飯は、中粒〜短粒の米を使う。
水分が多く、粘りも強い。
冷蔵して水分を飛ばした米を使う店もあるが、
食堂では炊きたてをそのまま投入することも珍しくない。

鍋に触れた瞬間、米が油を吸い、
火力がほんの少し弱まるだけで粘りが戻る。
このわずかな変化で、一皿全体の質が決まってしまう。

同じ店でも、時間帯で味が変わるのはこのためだ。
台湾の炒飯は、米の状態が結果を大きく左右する料理になっている。


具材の自由度がさらに揺らぎを生む

台湾の炒飯は具材の幅が広い。
蝦仁、叉焼、XO醤、玉ねぎ、コーン。
店ごとに配合が異なり、水分量と香りの強さも変わる。

熱炒では油と塩気が強く、
小吃店では軽く仕上げる。
同じ「炒飯」でも、狙っている文脈が違うため、
味の基準が揃いにくい。

米・具材・火力がそれぞれ揺れることで、
台湾の炒飯は当たり外れが自然と大きくなる。


料理人の手に残るゆらぎ

最後に差を決めるのは、料理人の手だ。
火を落とすタイミング、鍋を返す角度、油の量の微調整。
短粒米の炒飯は、これらを丁寧に扱わないと輪郭が崩れる。

当たりの炒飯に出会うということは、
その日の厨房にある「技」に触れるのと同じだ。

■関連記事:併せて読むとより理解が深まる。

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