街角の記録– category –
ここには、台湾の街角で出会った風景をまとめている。
歩いていて、ふと目にとまった建物や仕組みもあれば、
理由もなく何度も足が向く場所もある。
そこにどんな空気が流れていたのか、
どんな人がいて、どんな時間が積み重なってきたのか。
食とは少し離れた場所の歴史や気配も、静かに残しておきたい。
台北、台中、高雄を中心に、
台湾の“街の片隅”を少しずつ集めていく予定。
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街角の記録
高雄85大樓の誕生についての記録
―― 1997年、85大樓が「希望」だった頃 ―― 1990年代半ばの高雄は、今よりも空気が重く、そして熱かった。 世界第3位のコンテナ取扱量。港には船が列をなし、加工出口区の煙突からは昼夜を問わず煙が吐き出されていた。 街全体が巨大なエンジンのように振動... -
街角の記録
高雄・塩埕区 駁二芸術特区についての記録
── 忘れられた廃墟が、都市のアートになるまで ── 午後の早い時間、港に近い倉庫群のあいだを歩いていると、ここが「観光地」と呼ばれていることを、ときどき忘れそうになる。 レンガの壁は均一ではなく、塗り直された跡と、手を加えられていない部分が混... -
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高雄・鼓山区 愛河之心についての記録
―― ロマンチックな人工湖に隠された都市の機能 ―― 昼間、愛河之心の縁に腰を下ろす。木陰があり、川面は静かで、散歩の途中に立ち止まる人も多い。特別な観光地というより、近所の公園に近い空気がある。 夜になると様子が変わる。博愛路と同盟路の交差点... -
街角の記録
高雄・愛河についての記録
―― 運河として生まれ、川として呼ばれるまで ―― 昼下がりの愛河沿いを歩く。舗装された遊歩道は広く、ベンチは等間隔に置かれ、植え込みは手入れが行き届いている。 ジョギングをする人、犬を連れた家族、木陰でスマートフォンを眺める若者。ここにあるの... -
街角の記録
高雄・前鎮区 夢時代についての記録
―― 工場跡に置かれた巨大モール ―― 高雄の南側、港に近い一帯は、長く工場の土地だった。統一企業(Uni-President)の創業地に近く、醤油、飼料、製油などの製造拠点が集まっていた場所である。 2000年代初頭、統一グループはこの一帯の機能転換を決めた。... -
街角の記録
高雄・前金区 漢神百貨本店についての記録
―― 北と南で役割が分かれた都市 ―― 高雄で百貨店の話題になると、多くの視線は北へ向かう。新幹線とMRTが交差する場所に立つ漢神アリーナだ。 人は多く、回転は速い。若い客層と新しい消費が、日常的に流れ込む。 一方、南にある漢神百貨本店は、同じ名前... -
街角の記録
高雄の街が南に延びない理由についての記録
―― 地図を広げたときの違和感 ―― 高雄の地図を眺めると、ある偏りに気づく。左営や楠梓といった北側は、山が近いにもかかわらず、街が連続している。高層住宅や新しい区画が、途切れずに並ぶ。 一方で、前鎮や小港といった南側は、平地が広がっているよう... -
街角の記録
高雄・左営区 漢神アリーナについての記録
―― 都市の重心が北へ移動した日 ―― 高雄には大小さまざまな百貨店が存在する。だが、その中で売上という一点で見たとき、漢神アリーナは突出している。 週末のフードコートは常に満席。鼎泰豊には平気で2時間待ちの行列ができる。 これは「人気スポット」... -
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高雄・美麗島事件についての記録
―― 交差点に残る記憶 ―― 高雄の地下鉄で、最も知られている駅は美麗島駅だろう。改札を出ると、天井いっぱいに広がる極彩色のステンドグラスが視界を覆う。「世界で最も美しい駅」という評価も、誇張ではない。 ただ、その名前に、わずかな違和感が残る。... -
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高雄・美麗島駅についての記録
―― 光の下に埋め込まれた記念碑 ―― 改札を抜けた瞬間、視界が塞がれる。天井一面に広がる極彩色。思考より先に、身体が反応する。 ここは美麗島駅。高雄MRTの南北を貫く紅線と、東西を横切る橘線が交差する、ただ一つの地点だ。 人は通過するために集まっ...