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台湾の夜市で儲かるのは何屋か考えてみる

夜市の屋台を眺めていると、
「なぜこの店が、ここにあるのか」がだんだん見えてくる。

屋台の収益力は、実はとても単純な式に還元できる。

Profitability =(単価 − 変動費)× 回転速度

つまり、
高い粗利率 × 速い回転
この掛け算を最大化できる業態が、夜市の勝者になる。

この式から逆算すると、
自然と答えは絞られる。

調理工程が短く、
原価が安く、
提供が速い。

行き着く先は、
スナック(小吃)か、飲料である。


利益は「立地」へ再投資される

夜市で稼げる店には、共通点がある。

それは、
稼いだ金を、次の場所代に突っ込める余力があることだ。

夜市における最大の投資先は、
内装でも、広告でもない。

より良い立地である。

入口付近。
角地。
人の流れが必ず交差する場所。

高い場所代は、
単なるコストではない。

それは、
収益性の低い業態を排除するフィルターとして機能する。

結果として、
最も効率の良い「現金回収装置」が、
夜市の顔になる。


各夜市の「一等地の顔」で検証してみる

実際に夜市を歩くと、
この方程式の正解者はすぐに分かる。

寧夏夜市(台北)|劉芋仔
入口の最前列。
商品はほぼ一択。
1分間に何十個もタロ芋ボールが消えていく。

六合夜市(高雄)|鄭老牌(パパイヤミルク)
ゲート脇。
液体を注ぐだけ。
低原価・超高速オペレーションの極致。

饒河街夜市(台北)|福州世祖胡椒餅
東側入口。
焼き上がった瞬間に袋へ。
客が滞留しない設計。

自強夜市(高雄)|白糖粿・ドーナツ
市場の角地。
粉と油という、最も安い原材料を、
熱量だけで価値に変えている。

例外はない。
入口を制しているのは、
必ず「速く、安く、回る」店だ。


「美味しさ」の因果関係を逆転させる

ここで、
よくあるグルメ論と距離を取ってみる。

一般的にはこう言われる。
「美味しいから儲かる」。

夜市では、
この因果関係が逆転しているようだ。

儲かる仕組みがあるから、
その店は美味しくなれる。

高い収益性は、
より良い原材料を選ぶ資力を生む。

高い回転率は、
食材が滞留しない鮮度を保証する。

一等地の味とは、
情熱だけの産物ではない。

それは、
最適化されたキャッシュフローが生み出した、
原価への再投資の結果
でもある。


売り場の流動性が生む筋肉質な構造

食堂(固定店舗)は、
場所に縛られる。

そのため、
メニューを増やし、
選択肢を広げる「足し算」の経営になる。

一方、
屋台(流動店舗)は違う。

資本があれば、
売り場そのものをスライドできる。

だから、
一点突破で場所代を回収する
引き算の経営が成立する。

夜市の一等地は、
味のランキングではない。

最も効率的なビジネスの座標を示している。


システムが導き出す「至高の一杯」

夜市の入口に並ぶスナックや飲料は、
台湾で最も磨き抜かれた
経済の結晶でもある。

次にその看板を仰ぐとき、
味だけを評価するのは、
少しもったいない。

その一杯を、
その場所に、
その時間に、
出し続けることを可能にした
冷徹で、美しい仕組み

それもまた、その店の持つ旨味なのだと思う。


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