―― 昼は市場、夜は戦場の二重構造 ――
六合夜市が歩行者天国なら、苓雅自強夜市は今も現役の道路だ。
ここでは、車両が主役で、人は脇役になる。
夕方になると、仕事を終えたスクーターが一斉に流れ込んでくる。
排気ガスと湯気が混ざり、視界が少し白く曇る。
バイクに跨ったまま、弁当を受け取る。
台湾式のドライブスルーだ。
歩行者は、その鉄の流れを読まなければならない。
止まるか、進むか。
迷うと危ない。
ここは散歩する夜市ではない。
泳ぐ夜市だ。
「タイムシェア」される市場空間
この場所がここまで生活臭いのは、夜市専用ではないからだ。
中心にあるのは、苓雅公有市場。
朝は、生鮮食品が並ぶ。
魚、肉、野菜。
主婦たちが値段を睨み、手を伸ばす時間帯だ。
昼過ぎには、静かになる。
夕方になると、シャッターが下りる。
その軒先が、夜には屋台に変わる。
同じ場所を、違う時間に、違う人間が使う。
空間を拡張するのではなく、時間を重ねる。
この構造が、安さと味の濃さを支えている。

交差点の王者「南豊魯肉飯」
夜市の入口。
自強三路と苓雅二路が交わる交差点に、南豊魯肉飯はある。
ここで目を引くのは、細かいミンチではない。
鍋に鎮座するのは、巨大な豚の角煮だ。
脂と糖とタンパク質。
働いた体を最短距離で満たす構成。
市場のゲートキーパーとして、
ここは今日も黙々と回転している。
60年変わらない白い揚げ餅
脂のあとには、甘味が欲しくなる。
少し歩いた先に、老牌白糖粿がある。
餅米の生地をねじり、揚げて、砂糖をまぶす。
説明はそれで終わりだ。
派手さはない。
だが、この単純さがいい。
昼の市場の喧騒が嘘のように、味は静かだ。
またスクーターを避けながら、帰路につく。

飾らない高雄の素顔
近くには85ビルがあり、高級マンションも建つ。
それでも、並ぶ列は一つだ。
スーツも、作業着も、同じ魯肉飯を待つ。
ここには、見せるための街の顔がない。
信仰でも、娯楽でもない。
生きるための台所。
苓雅自強夜市は、今も高雄のライフラインとして機能している。
お洒落な服はいらない。
必要なのは、空腹と、反射神経だけだ。
住所: 高雄市苓雅區自強三路と苓雅二路の交差点周辺
営業時間: 17:00 – 1:00 (無休)
アクセス: MRT三多商圏駅(7番出口)から徒歩約10〜15分
地図: https://maps.app.goo.gl/Z4QqGXTWApzrRe5F9
昼は市場で夜は食堂、スクーターの波を泳いで飯を買う「高雄市民の台所」。

