―― 漢神アリーナと瑞豊夜市が作り出す、消費の渦 ――
塩埕区や新堀江を歩いたあと、
MRTで巨蛋駅に降りる。
空気が違う。
人の密度が、明らかに違う。
南の街が「落ち着いた」と言われるなら、
ここはまだ動いている場所だ。
買い物袋を持った家族。
制服姿の学生。
目的を持って集まってくる人の流れ。
高雄の財布は、
いまこのあたりに集まっている。
核にあるのは、漢神アリーナ
駅直結の漢神アリーナ。
南台湾で最も売上が大きい百貨店だ。
高級ブランドも、
ユニクロも、
鼎泰豊も入っている。
特別なものと、
日常のものが同じ屋根の下にある。
暑い街で、
涼しく、
迷わず、
何でも揃う。
それだけで、
人は集まる理由になる。
週末の地下は、
どの店も行列だ。
消費が、
ここで完結するように設計されている。

夜になると、瑞豊夜市が目を覚ます
百貨店の裏手に、瑞豊夜市がある。
観光地化した六合夜市とは性格が違う。
ここにいるのは、地元の学生と若い家族だ。
通路は狭い。
迷路のようだ。
売られているのは、
昔ながらの小吃よりも、
新しい組み合わせの食べ物。
ここで試され、
ここで残ったものが、
他の夜市へ広がっていく。
流行が、
静かに孵化する場所。
なぜ北なのか
理由は単純だ。
左営駅が近い。
新幹線の駅だ。
台北から来る人は、
まず北に降りる。
空港の時代は終わり、
都市の入口は変わった。
人の流れが変われば、
店も、街も動く。
南は海で止まるが、
北には余地がある。
これは選択ではなく、
構造の結果だ。

第三の中心として
塩埕区は、過去を語る街。
新堀江は、若者だった時代の街。
そしてここは、
いま進行中の街だ。
瑞豊夜市の喧騒の中で立ち止まり、
漢神アリーナの大きな光を見る。
高雄は、
港だけの街ではなくなった。
重心は、
静かに北へ移動している。

