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台湾・YouBike 1.0 vs 2.0についての記録

台北の街を歩いていると、二種類の自転車が視界に入る。
オレンジ色の古い車体と、白と黄色の新しい車体。

多くの人にとっては、単なるデザインの違いだろう。
古いのが残っていて、新しいのに置き換わっていく。その程度の話に見える。

だが、少し注意深く観察すると、この二つは同じ系譜にある「改良型」ではない。
構造そのものが違う。
色が変わったのではなく、役割が変わった自転車だ。


色の違いではなく、種の違い

YouBike 1.0 は、街に設置された「設備」だった。
YouBike 2.0 は、街に散らばる「個体」だ。

この違いは、見た目ではなく、都市との関係性にある。

1.0 が成立していた時代、YouBike は「置ける場所」にしか存在しなかった。
2.0 になってから、YouBike は「使われる場所」に現れるようになった。

この転換は、ユーザー体験の改善というよりも、
都市インフラとして生き残るための仕様変更だった。


土木工事からの解放

YouBike 1.0 のステーションは、明確に「設備」だった。

地面を掘り、電源を引き、制御用の柱を立てる。
道路使用許可が必要で、工期も長い。
設置には予算と政治的調整が不可欠だった。

つまり、
「ここに置きたい」ではなく
「ここなら置ける」という発想になる。

結果として、配置は粗くなり、隙間が生まれる。
徒歩圏を埋めるには、あまりに重い仕組みだった。

2.0 で状況は一変する。

自転車そのものが発電し、通信する。
ステーションは、地面に固定された金属の支柱になる。

掘らない。
配線しない。
短時間で設置できる。

これは利便性の向上というより、制約条件の消滅だ。


「頭脳」が移動した

1.0 の時代、知能はステーション側にあった。
自転車は、識別される対象にすぎない。

2.0 では、それが逆転する。

ハンドル部分に取り付けられた小さな端末。
そこに通信、認証、記録の機能が集約された。

自転車一台一台が、独立した判断単位になる。

結果として、ステーションは「管理装置」ではなく
単なる返却ポイントに変わった。

この変化が意味するのは大きい。
都市は、固定された拠点ではなく、
分散した個体によってカバーされるようになった。


触るとわかる細部の変化

1.0 と 2.0 の違いは、乗った瞬間にも現れる。

サドルは片手で調整できる。
ロックは物理鍵ではなく、端末操作になる。
スタンドは倒れにくく、重心が低い。

どれも劇的ではない。
だが、毎日使う前提で積み重ねられた変更だ。

観光用の自転車ではなく、
通勤・通学・日常移動の道具として設計されている。

ここに、「長く街に残るもの」の条件が見える。


地方システムが消えた理由

かつて、高雄には C-bike があった。
台南には T-bike があった。

それぞれ地域に根ざした取り組みだったが、
2.0 の普及とともに姿を消していく。

理由は単純だ。

・電源工事が不要
・設置コストが低い
・運用が標準化されている

行政にとって、これ以上に合理的な選択肢はない。

自前で持つ理由が、消えた。

結果として、台湾全土は黄色に統一された。
一枚のカードで、島のどこでも乗れる。

これは文化の勝利ではない。
運用の勝利だ。


走る装置としての自転車

YouBike 1.0 は、レンタサイクルだった。
YouBike 2.0 は、都市に配置された移動装置だ。

「どこにでもある」
「すぐに乗れる」

その感覚は、偶然ではない。

白い車体のハンドル部分。
あの小さな画面の中に、
台湾の都市交通が選び取った答えが詰まっている。


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