―― 夕暮れ、百貨店の足元から塩埕区へ ――
高雄の夕方は、終わりではなく切り替えに近い。
太陽が沈み切る前から、街は次のモードに入り始める。
昼の熱はまだ残っているが、影が伸び、風向きが変わる。
百貨店の出口では、冷房の名残と外気の湿度がぶつかり合っている。
三多商圏。
高雄の「いま」が最も分かりやすく積層している場所だ。
三多商圏と興中夜市
SOGOから外に出る。
空はまだ明るいが、色味はすでに昼ではない。
三多商圏の大通りから一本入ると、興中夜市へとつながる並木道が現れる。
花屋と屋台が同居し、切り花の匂いと油の匂いが混ざっている。
巨大な百貨店が垂直に消費を積み上げている一方で、
その足元には、水平に広がる生活の市場が貼り付いている。
海の方へ歩くにつれて、人の密度が少しずつ下がる。
観光客の姿が減り、歩く速度が揃ってくる。
夕方は、街が静かに選別を始める時間帯だ。

Scene 2|ランドマーク:85ビルの重力
85ビルの足元に立つ。
見上げると、首が自然に後ろへ引っ張られる。
かつて台湾一だった摩天楼は、近くで見ると少し疲れている。
それでも、圧倒的な質量は失われていない。
ビルの影が伸び、周囲の空気が一段落ち着く。
その瞬間、急に空腹に気づく。
夕暮れは、身体の感覚を一度リセットする。
ここから先は、食べてから進んだ方がいい。
自強夜市の水餃子
自強夜市に入ると、空気が一気に荒くなる。
バイクの流れが止まらず、路地全体が呼吸している。
南豊魯肉飯の角煮が目に入る。
だが今日は、もう少し噛み応えが欲しい。
苓雅水餃大王に入る。
皿に積まれた水餃子は、薄皮ではない。
小麦の層がはっきりしていて、歯が必要だ。
酸辣湯と一緒に流し込む。

夜風と港のネオン
近くのYouBikeステーションでロックを解除する。
電子音の後、街との接続方法が変わる。
成功路を抜け、愛河方面へ。
海風が入り、昼の熱が一気に引いていく。
河口に出ると、視界が開ける。
左手に高雄流行音楽中心。
幾何学的な建築に、ネオンが貼り付いている。
暗い海と、光る構造物。
過剰な演出ではないが、十分に未来的だ。
この感覚が、高雄の夜を特徴づけている。

Scene 5|帰還:塩埕区と豆花
五福橋を渡る。
橋の中央で、光の質が変わる。
LEDの鋭さが後ろに下がり、
街灯の鈍い光が前に出てくる。
YouBikeを返却する。
「ガチャン」という音で、移動が終わる。
塩埕区の路地で、豆花を買う。
水餃子の脂が、静かにほどけていく。
三多の消費から始まり、港の未来をかすめ、
最後は古い街の甘さに戻る。
このループがあるから、
高雄の夜は、ただの外出で終わらない。



