―― あるいは、エネルギー保存の法則について ――
朝のニュースで、台北市交通局の数字が耳に入ってきた。
「YouBike、1日20万回利用」
数字としては大きい。
ただ、それ以上に気になったのは
「20万回という行動が、都市のエネルギーにどう影響しているのか」
という点だった。
街を歩いていると、
以前より排気ガスの匂いが薄くなった気がする。
それは本当に気のせいなのだろうか。
YouBikeが生んでいる「見えない効果」を、
少しだけ量ってみたいと思った。
ガソリンはどれほど節約されているのか
最初に、前提を置く。
YouBikeの1回の平均利用距離は、
各種調査を見る限り 2〜3km と言われている。
ここでは、 3km とする。
すると1日あたりの総移動距離は、
20万回 × 3km = 60万km
60万km。
地球の赤道を 15周する距離に相当する。
もしこれと同じ距離を、
台北の象徴でもある スクーター(機車) が走ったとすればどうなるか。
一般的なスクーターの燃費は、
だいたい 1リットルで30km。
計算すると、
60万km ÷ 30 = 20,000リットル
2万リットル。
大型タンクローリー1台分、
あるいはドラム缶で100本分のガソリンが
“消費されずに”残る計算になる。
これが毎日だ。
夕方の空気の軽さや、
交差点で感じる風の匂いが
少し変わった気がするのも、
あながち偶然ではないのかもしれない。
しかし、自転車を漕ぐのにも燃料がいる
ガソリンが燃えていないということは、
そのぶん人間がエネルギーを出しているということでもある。
人間がペダルを漕ぐには、
当然ながらカロリーが必要だ。
自転車で3km(およそ15分)を走ると、
平均して 100kcal ほど使うと言われている。
すると1日の総エネルギー消費は、
20万回 × 100kcal = 2,000万kcal
2,000万キロカロリー。
この膨大なエネルギーは、
どこから供給されているのだろう。
台北の街を思い浮かべると、
答えが見えてくる。
歩道のあちこちに並ぶ
ドリンクスタンドの光。
その前に並ぶ人の列。
そう、あれだ。
2,000万kcalはタピオカ何杯分なのか
タピオカミルクティー(全糖・標準サイズ)は、
一般的に 500kcal程度 ある。
では、2,000万kcalを
タピオカに置き換えるとどうなるのか。
2,000万kcal ÷ 500kcal = 40,000杯
1日で4万杯。
エネルギーは保存される。
ガソリンが燃えなかったぶん、
別の燃料が消費されている。
黒い液体(石油)から、
甘い液体(ミルクティー)へ。
都市の燃料が
ゆっくりと置き換わっているようにも見える。
YouBikeの前か後で、だいたい甘い飲み物を飲んでいる
YouBikeに乗る人をよく見ると、
ハンドルに袋をぶら下げていることが多い。
その中には高い確率でドリンクカップが入っている。
あれは、
もしかすると燃料タンクなのかもしれない。
ガソリンの匂いは薄れ、
代わりに甘い香りが街を漂う。
台北という都市は、
今日も見えないところで
エネルギーのかたちを変えて生きている。
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