ロンドンで愛されるナシレマについての記録
クアラルンプールでは2リンギットの小さな包みだったナシレマが、ロンドンの店では12〜15ポンドの皿に載っている。ココナッツの香り、赤いサンバル、揚げた鶏肉は、同じ料理のまま別の顔を見せている。
クアラルンプールでは2リンギットの小さな包みだったナシレマが、ロンドンの店では12〜15ポンドの皿に載っている。ココナッツの香り、赤いサンバル、揚げた鶏肉は、同じ料理のまま別の顔を見せている。
ガラスケースの中には、揚げた鶏、黒く煮込まれた牛肉、赤いサンバルの料理、大ぶりのイカやエビが並んでいる。白飯に何を載せるかで、同じナシカンダーでも皿の重さと食べ進み方が変わる。
マレーシアの食堂では、赤いペーストが料理の脇ではなく、ご飯や肉の上に厚く置かれている。ナシレマの甘い米も、焼き魚も、麺のスープも、その赤い辛味を受け止める土台に見えてくる。
早朝の路上に、緑色の小さな正四面体が積まれている。葉を開くまで中身は見えないのに、ココナッツの甘い香りとサンバルの発酵した辛さが、包みの外まで漏れてくる。
マレーシアのママックでは、同じ小麦粉の生地が卵やイワシを包む朝食にも、砂糖と練乳をまとった円錐にもなる。鉄板の前では、ロティの形だけでなく、食事と菓子の境目まで動いている。
ママックの店先で揚がる鶏肉には、厚い衣がない。ターメリックやレモングラスの繊維だけが表面に貼りつき、油の中で焦げ跡と香りを濃くしていく。
マレーシアの街角では、朝から生地を鉄板に叩きつける音が響いている。薄く伸ばして焼かれた何も入っていない円盤を、客は手でちぎり、カレーに浸して食べる。
ガラスケースの前では、茶色い料理の山を前にした客が、ほとんど立ち止まらず皿を進めていく。メニューも値段も見当たらない店で、注文は会話より先に指先と流れで形になっている。
ジョージタウンのママックでは、白いご飯にいくつものカレーがかかり、境目のない茶色い皿が出てくる。隣では、甘い紅茶が泡を立て、夜の客が「Boss」と呼び合っている。
ペナンのナシカンダー店では、白米が見えなくなるほど複数のソースをかける「バンジル」が注文される。料理名には、材料でも地名でもなく、天秤棒で担ぐ動作が残っている。