ロンドンで愛されるナシレマについての記録
クアラルンプールでは2リンギットの小さな包みだったナシレマが、ロンドンの店では12〜15ポンドの皿に載っている。ココナッツの香り、赤いサンバル、揚げた鶏肉は、同じ料理のまま別の顔を見せている。
クアラルンプールでは2リンギットの小さな包みだったナシレマが、ロンドンの店では12〜15ポンドの皿に載っている。ココナッツの香り、赤いサンバル、揚げた鶏肉は、同じ料理のまま別の顔を見せている。
ガラスケースの中には、揚げた鶏、黒く煮込まれた牛肉、赤いサンバルの料理、大ぶりのイカやエビが並んでいる。白飯に何を載せるかで、同じナシカンダーでも皿の重さと食べ進み方が変わる。
マレーシアの食堂では、赤いペーストが料理の脇ではなく、ご飯や肉の上に厚く置かれている。ナシレマの甘い米も、焼き魚も、麺のスープも、その赤い辛味を受け止める土台に見えてくる。
KLセントラルのNu Sentral側出口を出ると、横断歩道の手前に赤と青の「ABC」が並んでいる。早朝も深夜も白い蛍光灯がつき、駅から流れてきた人がそのまま席に入っていく。
Jalan TARの色褪せた緑の看板の下で、皿の上では赤や黄色より先に、粘度のある漆黒が立ち上がる。狭い店内では、立場も言葉も違う客が肩を寄せ、同じ重い昼食に手を伸ばしている。
Jalan TARのSOGO前では、排気音の中にカレーの香りが立ち、ガラス越しに見える皿の動きへ人が次々と吸い込まれていく。行列の先で盛られるのは、店名を冠した甘い揚げ鶏と、何種類ものカレーが重なる一皿だ。
茶色いソースに覆われ、具材の境目もほとんど見えないナシカンダーの皿を、会計係のアネは一瞥して12リンギットと告げた。オクラを一つ足したのに、いつもの金額は変わらなかった。