街角の記録– category –
ここには、台湾の街角で出会った風景をまとめている。
歩いていて、ふと目にとまった建物や仕組みもあれば、
理由もなく何度も足が向く場所もある。
そこにどんな空気が流れていたのか、
どんな人がいて、どんな時間が積み重なってきたのか。
食とは少し離れた場所の歴史や気配も、静かに残しておきたい。
台北、台中、高雄を中心に、
台湾の“街の片隅”を少しずつ集めていく予定。
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街角の記録
台湾の炒飯の当たり外れについての記録
―― 蓬莱米の粘り気と火力の揺らぎ ―― 台湾ではよく炒飯を頼んでいた。ただ、タイに行くようになってから、その頻度は自然と減っていった。理由は単純で、台湾の炒飯は外れやすい。一方、バンコクの食堂で出る炒飯は、どこで頼んでも一定の水準に収まる。 ... -
街角の記録
どこの夜市でも屋台が似通っている理由についての記録|台湾
―― 似通った夜市が生まれる理由 ―― 夜市を歩くと、既視感がつきまとう。士林夜市で見かけたサイコロステーキが、高雄の六合夜市でも同じ音を立てている。黒糖タピオカも、巨大フライドチキンも、看板の色と書体までほとんど変わらない。 自由に見える屋台... -
街角の記録
台湾の食堂が軒先に厨房を構える理由についての記録
―― 台湾の街並みを形作るあいまいな境界 ―― 台湾の街を歩くと、食堂の厨房が店内ではなく軒先に張り出していることに気づく。火柱を上げる中華鍋、茹で釜の湯気、まな板の乾いた音。店外にすべてが露出している。 観光ガイドは「活気があるから」と書くが... -
街角の記録
台湾の食堂が月曜日に休む理由についての記録
―― 都市の休日と、鮮度が決めるサイクル ―― 台北の昼下がり。普段は湯気と人声が溢れるはずの食堂が、シャッターを半分下ろしている。貼り紙には「星期一公休」。 この「月曜休み」という習慣は、チェーン店ではなく家族経営の店ほど顕著だ。週末の熱量が... -
街角の記録
夕方、音楽とともに現れるごみ収集車についての記録|台湾
―― 「垃圾不落地」が生んだ手渡しの習慣 ―― 台湾の街を歩いていると、夕暮れに突然軽やかなメロディーが流れる。ベートーヴェンの「エリーゼのために」か、あるいは「天国と地獄」。その方向へ人が流れ、手には黄色のごみ袋。最初は祭りかと錯覚するが、正... -
街角の記録
台中の生い立ちについての記録
―― 自然にできなかった街 ―― 台中を歩くたびに思う。この街には、台南のような「海が削って作った歴史」も、台北のような「山に囲まれた要塞」もない。にもかかわらず、道路は妙に広く、区画は妙に整っていて、どこか人工的な匂いがする。 台中とは、台湾... -
街角の記録
北東アジア ゴールデンフライトサークルについての記録 | 台湾
―― 台北が空路でつなぐ「半径3時間」の都市圏 ―― 松山空港の出発ゲートで、羽田・金浦・虹橋の文字を目で追う。いずれも都心に近すぎる空港。そして、どれも片道3時間以内。 台北は、北東アジアの真ん中にある。まるで、東京・ソウル・上海という巨大都市... -
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松山空港についての記録 | 台湾
―― 台北の中に残された空白地帯 ―― 台北を北東へ走ると、突然視界が開ける。高層ビルの連続が途切れ、滑走路が横に長く伸びている。 台北松山空港。街の密度が極端に高い台北にあって、この広大な空白地帯は明らかに異物だ。 それでも空港がここにあるのは... -
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台南 鯤鯓(クンシェン)の謎についての記録
―― 消えた「7頭のクジラ」と、オランダ支配を終わらせた泥 ―― 台南を歩いていると、「鯤鯓(クンシェン)」という地名に出会う。海から離れた陸地に、なぜ「クジラの背中」という字が残るのか。 理由は単純で、ここはもともと海だった。17世紀、台南の沖合... -
街角の記録
台南 消えたラグーンと古都についての記録
―― 海が陸になり、港が街になった場所 ―― 台南の街を歩くと、不思議な感覚にとらわれる。古いものがそのまま残っているようでいて、しかし地図を見ると、街の輪郭は妙に海から遠い。 静かな路地、赤レンガの廟、乾いた風。ここは確かに「古都」なのに、海...