高雄・前鎮区 夢時代についての記録

港に近い高雄の前鎮区に、魚の形をした本館と観覧車を載せた別館からなる巨大モールがある。建物は2007年に完成していたが、北側の市街地との間には、長く立ち入りできない軍用地が残っていた。

高雄の南側、港に近い一帯は、長く工場の土地だった。
統一企業(Uni-President)の創業地に近く、醤油、飼料、製油などの製造拠点が集まっていた場所である。

2000年代初頭、統一グループはこの一帯の機能転換を決めた。
工場を郊外へ移し、土地そのものを商業と都市機能に組み替えるという判断だった。

それは建物の更新ではなく、資産の性質を変える行為だった。
製造業として蓄積してきた土地を、「消費」と「滞留」のための装置に変える。
統一グループの中で、重心が静かに動いた瞬間でもある。


規模が先に来てしまった建築

2007年に開業した夢時代は、当時の台湾では異質な存在だった。

総床面積は約12万坪。
店舗数は800を超え、魚の形をした本館と、観覧車を載せた別館で構成されている。

ここには「買い物」というより、「一日を収容する」発想があった。
食事、娯楽、休憩、時間消費。
高雄にそれまで存在しなかったスケールの箱が、港の脇に置かれた。

建築としては完成していたが、都市との関係は未完成だった。


地図に残された分断

夢時代が長く抱えた問題は、建物の中にはなかった。
外にあった。

北側、市街地との間に第205兵工廠が横たわっていた。
面積は約57ヘクタール。
市民が通り抜けることのできない、巨大な軍事用地である。

地図上では近い。
しかし実際には大きく迂回しなければ辿り着けない。

結果として、夢時代は「孤立した大型モール」になった。
週末は人が集まるが、平日は駐車場の広さが目立つ。
心臓はあるが、血管がつながっていない状態が続いた。

高雄の街が南に延びない理由についての記録

高雄の地図では、山に近い北側に高層住宅や新しい区画が連続する一方、平地の広がる南側で街の輪郭が途切れる。港と空港、MRTがそろう場所にも、低いスカイラインと大きな空白が残っている。

世界の片隅でいただきます

早すぎた場所取り

この立地が偶然だったとは考えにくい。
統一グループは、205兵工廠がいずれ移転することを前提にしていた。

ただし、計画は想定よりも大幅に遅れた。
土壌汚染、移転先の確保、行政手続き。
時間は10年以上単位で延びた。

夢時代は、都市が追いつくのを待つ装置になった。
赤字と空白を抱えながら、位置だけを確保し続けた。


DC21構想と接続の回復

現在、状況は動いている。
205兵工廠の移転と解体が進み、その跡地を含む再開発計画が走り始めた。

統一グループが主導するDC21構想では、
夢時代第2期として高層のホテル、レジデンス、オフィスが建設される。

同時に、新しい道路とLRTの駅が整備され、
北側の市街地と物理的につながる。

孤島だったモールは、半島を経て、大陸側に接続される。
ここで初めて、夢時代は都市の端ではなく、入口になる。


開業はまだ終わっていない

2007年のオープンから18年が経つ。
だが、これまでの夢時代は準備段階だったと見ることもできる。

巨大な建築は先に置かれ、
都市の側がそれに追いつこうとしている。

港のそばに置かれたこの箱は、
ようやく周囲と同じ速度で呼吸を始める。

高雄・前金区 漢神百貨本店についての記録

高雄の南側にある漢神百貨本店は、駅から歩き、いまも新しい建物ではない。それでも入口にはエルメスやシャネルが並び、上階のホテルからは外へ出ずにその売場へ降りられる。

世界の片隅でいただきます

Key Observation:
夢時代は商業施設ではなく、都市構造の再編が完了するまで待機していた先行投資である。

統一夢時代ショッピングモール(Dream Mall)

806 高雄市前鎮區中華五路789號
11:00~22:00(金曜 ~22:30 / 土曜 10:30~22:30 / 日曜 10:30~22:00)
高雄LRT夢時代駅(C5)から徒歩約7分。
高雄MRT凱旋駅(R6)から徒歩約13分(シャトルバス有)。

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