MENU

KL Sentral・Nu Sentral Original Penang Kayu についての記録

KLセントラル駅に直結するNu Sentralモールの地下に、ナシカンダー(Nasi Kandar)の店がある。1974年にペナンの屋台から始まったOriginal Penang Kayuだ。複数のカレーを皿の上で混ぜ合わせ、子供の背丈ほどある円錐形のロティ・ティシュ(Roti Tisu)を脇に置き、テ・タリ(Teh Tarik)で締める。

地元の評価は高くない。「ポトン・カユ」、つまりぼったくりという言葉が返ってくることもある。路面店の1.5倍ほどの価格で、味は標準的だという意見は正しい。しかし、重い荷物を持った到着直後の旅行者にとって、評価の軸は変わる。


冷えた車内から、スパイスの匂いへ

クアラルンプール国際空港(KLIA)からKLIAエクスプレスに乗ると、28分でKLセントラル駅に着く。車内はエアコンが効いていて、シートは清潔で、窓の外には高速道路とジャングルが交互に流れる。空港もそうだが、エクスプレスの中は温度と清潔さが一定に保たれた、国籍不明の空間だ。

KLセントラルに着き、改札を出て、直結するショッピングモール「Nu Sentral」の地下へ向かう。そこで空気が変わる。金属と冷気の匂いが消え、焦げたスパイスと重い油の匂いが鼻に届く。それがマレーシアの匂いだと、二度目以降の旅行者はすぐに気づく。

ホテルへ直行することもできる。しかし、スーツケースを引きながら、まずここで何かを食べることには意味がある。胃袋を熱帯の温度に合わせる、という言い方が最も近い。KLセントラルのOriginal Penang Kayuは、そのための場所として機能している。


ナシカンダーとは何か

ナシカンダー(Nasi Kandar)。マレーシアに初めて来た人間にとって、この料理の輪郭は掴みにくい。「カレーライス」と説明されることもあるが、それは正確ではない。

ペナン島を発祥とする、インド系ムスリム(ママック)による大衆食だ。「Nasi」はマレー語でご飯、「Kandar」は天秤棒を意味する。かつて売り手が天秤棒の両端にご飯とカレーを吊るし、街を歩きながら売り歩いていたスタイルが名前の由来になっている。

最大の特徴は、混ぜることだ。一種類のカレーを綺麗にご飯の上に乗せるのではない。魚のカレー、鶏のカレー、牛の煮込み。異なるスパイスで仕上げられた複数のソースを、皿の上で渾然一体になるまで掛け合わせる。「チャンプル(Campur)」はマレー語で混ぜるという意味だ。完成した皿は茶色い。見た目は雑然としているが、複数のソースが混ざることで、単体では出せない複雑な味が生まれる。これがナシカンダーの構造だ。


「Kayu(棒)」と呼ばれた男の店

店の名はOriginal Penang Kayu Nasi Kandar。NU Sentralの地下階にあり、通路沿いに開いている。

「Kayu」はマレー語で木、あるいは棒を意味する。

創業者のSirajudin(シラジュディン)氏は、子供の頃に体が細く、棒のようだとからかわれていたという。そのあだ名がそのまま屋号になった。諸説あるとされるが、この由来が最もよく語られる。

1974年、ペナンの小さな屋台から始まった。天秤棒を担いで路地を歩いていた料理が、今や全国に展開する巨大チェーンの看板メニューになっている。KLセントラル店は、その象徴的な一軒だ。駅直結のモールの地下という立地でありながら、厨房は開放的で、煙と匂いが客席まで届く。屋台の熱気を、冷房の効いた空間の中に閉じ込めたような店だ。ペナンの路地で生まれた料理が、クアラルンプールの駅ビルで同じように出されているという距離感に、この料理の広がりが見える。

注文の仕方

注文はショーケースの前から始まる。ガラスの向こうに、今日のおかずが並んでいる。巨大なフライドチキン、赤いソースで煮込まれたイカ、黒い煮汁の牛肉。指を差して選ぶ。言葉は要らない。

おかずを選び終えたら、最後にソースの指示を出す。ここが最も重要な手順だ。

「クア・チャンプル(Kuah Campur)、バンジル(Banjir)」

「クア」はソース、「チャンプル」は混ぜる、「バンジル」は洪水を意味する。複数のソースを混ぜて、洪水のようにたっぷりと注いでほしい、という注文だ。店員がレードルを手に取り、魚カレー、チキンカレー、牛の煮汁を次々とご飯の上に注いでいく。複数のソースが混ざり合い、境界線のない茶色い海が皿の上にできる。見た目は決して美しくない。しかしこの状態が、ナシカンダーの完成形だ。混ざり合うことで、単体では出ない複雑な味の層が生まれる。


そびえ立つロティ・ティッシュ

席に着き、ナシカンダーが運ばれてくるのを待っていると、隣のテーブルへ向かうウェイターの手に、異様なものが乗っているのに気づく。

子供の背丈ほどある、円錐形の塔だ。

ロティ・ティシュ(Roti Tisu)と呼ばれる。「ティシュ」はマレー語でティッシュペーパーを意味する。その名の通り、生地を極限まで薄く伸ばし、円錐状に立ち上げて焼いたものだ。表面には砂糖と練乳が塗られている。

Kayuをナシカンダーの店として有名にしたのはカレーだが、このロティ・ティシュが看板のもう一本の柱になっている。視覚的なインパクトが強く、隣のテーブルに運ばれてくるたびに、初めて見る客の視線が集まる。

ナシカンダーの皿は重く、辛く、茶色い。その横にこの白い塔が立つ。カレーの塩気と辛味の後に、砂糖と練乳の甘さが口に広がる。この振れ幅が、長時間の移動で鈍くなった感覚を一度揺り動かす。食べ方に決まりはなく、手で崩しながら食べる人もいれば、カレーにつけて食べる人もいる。


テ・タリは消火装置

食後、口の中にスパイスの熱が残る。水を飲んでも、カレーの油は流れない。油性の辛さは、水と馴染まない。

ここで頼むのがテ・タリ(Teh Tarik)だ。強く淹れた紅茶に、コンデンスミルクをたっぷりと混ぜた飲み物で、「タリ」はマレー語で引くという意味だ。高い位置から低い位置へ液体を注ぎ移す動作を繰り返し、泡を立てながら温度と味を均一に整える。その所作が名前になった。

乳脂肪と練乳の強烈な甘さが、スパイスの油を包み込んで中和する。辛さの後に甘さが来て、舌がリセットされる。これはカレーの後に飲む飲み物というよりも、ナシカンダーという食事の構造の中に組み込まれた最後の工程に近い。

甘さを抑えた「クラン・マニス(Kurang Manis)」で頼むこともできる。しかしここでは、甘さに正直に従うのが、この料理との正しい向き合い方かもしれない。


「ポトン・カユ」と呼ばれる理由

Googleマップでこの店を検索すると、評価は星3.5前後を推移していることが多い。マレーシア人の友人に「Kayuに行った」と伝えると、たいてい苦笑いが返ってくる。

「あそこは高いよ。ポトン・カユだ」

「Potong Kayu(ポトン・カユ)」はマレー語で「木を切る」という意味だが、転じて「ぼったくり」を指すスラングとして使われる。店名の「Kayu」と掛けた皮肉だ。路面店と比べると価格は1.5倍ほど高く、味は標準的だという評価が多い。「もっと安くて旨い店はいくらでもある」という意見は、現地の基準では正しい。

しかしその評価は、バイクや車で自由に移動できる地元民の視点から来ている。クアラルンプールの地理を知り、どの屋台が旨いかを知っている人間の言葉だ。到着したばかりの旅行者には、その情報も移動手段も、まだない。


重い荷物を持った人間への、別の評価軸

スーツケースを引き、長距離フライトで体が重く、外の蒸し暑さにまだ慣れていない旅行者にとって、評価の基準は変わる。

KLセントラル駅に直結していること。床が清潔で、エアコンが効いていること。荷物を置けるスペースがあること。英語が通じること。注文を急かされないこと。これらは、数リンギットの差額以上の意味を持つ条件だ。

ディープな屋台に行けば、もっと安くて旨いナシカンダーがある。しかしそこでは、暑い路上に並び、早口のマレー語が飛び交い、注文の作法も暗黙のルールも誰も教えてくれない。初めてナシカンダーに挑戦する人間にとって、そのハードルは高い。

Kayuのショーケースでは、指を差すだけで選べる。「クア・チャンプル、バンジル」の二言を覚えれば、あとは何も言わなくていい。ナシカンダーとはどんな料理か、クア・チャンプルとはどういう味か。ここで一度経験しておけば、次の屋台では少し落ち着いて立てる。Kayuは、マレーシアの食への最初の入口として、整った場所だ。


胃袋の切り替えが終わる

皿に残ったカレーをロティで拭い、テ・タリを飲み干す。

KLIAエクスプレスの冷えた車内にいた時の感覚は、もうない。体がマレーシアの熱さと同じ温度になっている。スパイスの油が胃の中に落ち着き、甘いミルクティーが口の中を整えた。

スーツケースを引き、モールの出口へ向かう。自動ドアの向こうに、クアラルンプールの外気が待っている。

Original Penang Kayu Nasi Kandar (NU Sentral店)

— Unit LG. 30 & 31, NU Sentral Mall, 201, Jalan Tun Sambanthan, Brickfields, 50470 Kuala Lumpur
— 11:00 – 14:00 / 17:00 – 21:00 (月曜定休)
— KLセントラル駅直結。NU Sentralモール LG階(地下)、屋外。

Google Mapsで見る →


よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次