高雄・新興区 阿霞焼肉飯についての記録

―― 高雄の焼き文化が残した一杯 ――

高雄の街を歩くと、台北ではあまり見かけない言葉に出会う。
焼肉飯。
南部の食堂では当たり前のように掲げられているが、旅人には少し新鮮に映る。

阿霞焼肉飯は、その代表格だ。
看板も店構えも飾り気がない。
昼どきになると、近所の人がそのまま吸い込まれていく。
観光のための店ではなく、生活の延長にある小さな食堂だ。

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高雄名物「焼肉飯」というジャンル

焼肉飯は、炭火で焼いた甘辛い豚肉をご飯に乗せた丼料理だ。
南部らしい甘めの味付けが特徴だが、阿霞は少し違う。

タレの甘さは控えめで、
代わりに炭火の香りが強い。
肉の表面にわずかに残る焦げが、食べる速度を自然と早める。

硬めに炊かれたご飯と、香りの強い肉。
それがここでは当たり前のように出てくる。

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焼肉飯と味噌湯という「セット」の完成度

席に着くと、周囲のテーブルに同じ組み合わせが並んでいることに気づく。
焼肉飯と味噌湯。

台湾の味噌汁は甘いことが多いが、
阿霞の味噌湯は焼肉飯の濃さを静かに受け止める味だった。
豆腐と大根が沈み、
その塩気と甘みが、焼いた肉の余韻を少しだけ落ち着かせてくれる。

付け合わせの生姜の甘酢漬けも、この丼に欠かせない。
脂と炭火の後に、口の中を一度軽く戻してくれる。

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店の使い方と、小さなルール

阿霞は広くない。
昼どきは相席が自然になる。
スプーンや箸、タレ類はすべて自分で取りに行く。

それでも回転が早いのは、
客が迷わないからだろう。
焼肉飯を頼み、味噌湯を添える。
ただそれだけで席が埋まる。

持ち帰り（外帯）にすると、
滷蛋や油豆腐がセットで付く。
地元の人が列をつくる理由のひとつだと思った。

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小ぶりな量が残す余白

阿霞の焼肉飯は、見た目より小ぶりだ。
それが物足りなさではなく、むしろちょうどいい。
高雄では、このあと別の店に寄ったり、夜市に流れたりする。
その余白を残してくれる一杯だった。

丼を空にして店を出ると、
炭火の匂いが少しだけ服に残っていた。

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