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台湾の朝食屋での注文の仕方についての記録

台湾の朝は、音が多い。
鉄板の擦れる音、豆乳が注がれる音、短い呼び声。
昼の食堂よりも、朝食屋のほうがはるかに忙しい。
その分、注文の仕方には独特の「型」がある。

観光客が戸惑うのは、言葉の問題というより、
スピードと前提条件の違いだ。


食堂との決定的な違い

昼の小吃店や食堂には、たいてい伝票と赤鉛筆がある。
席について、落ち着いて選べばいい。

しかし、伝統的な朝食屋(豆漿店)には、それがないことが多い。
基本は列に並び、カウンターで口頭注文だ。

理由は単純で、回転が極端に速い。
一人にかけられる時間は数秒単位。
注文は「考える行為」ではなく、「処理」だ。


メニューは壁にある

朝食屋のメニューは、手元にはない。
多くの場合、厨房の奥や壁の高い位置に掲示されている。

列に並んでいる間は見えるが、
いざ自分の番でカウンターに立つと、
逆にそのメニューが死角に入る。

そのため、
並んでいる間に決めておくか、
前の客の注文を見て指差すか、
どちらかになる。

ここで立ち止まると、列全体が止まる。
それは、この空間では歓迎されない。


豆乳は「指定して完成する」

朝食屋で最も失敗が多いのが、豆乳だ。

「豆漿(ドウジャン)」と言っただけでは、注文は終わらない。
必ず、次の確認が入る。

冰的・熱的(ビンダー、ルーダー)
冷たいか、温かいか。

甜的・鹹的(テェンダー、シェンダー)
甘いか、塩味か。

この二つに即答できないと、
店員の判断で「標準」が出てくるか、
聞き返されて流れが止まる。

朝食屋では、
指定できない=決まっていない
という扱いになる。


注文できる「間」を待つ

店員は、調理、包装、会計を同時にこなしている。
こちらが声を出しても、聞こえていないことは多い。

正解は、
目が合うまで待つこと。
あるいは、顎や手で合図されるまで黙ること。

台湾の朝食屋では、
大声よりも「タイミング」のほうが重要だ。


最も確実な方法:書いて見せる

言葉に不安があるなら、
事前に文字で用意するのが一番確実だ。

紙でも、スマホでもいい。
品名とオプションを簡潔に書く。


冰豆漿 半糖
起司蛋餅

視覚情報は、誤解が起きない。
忙しい店員にとっても、
これが最もストレスの少ないやり取りになる。


誤差を受け入れるという前提

それでも、違うものが出てくることはある。
甘さが違う、具が違う、量が違う。

朝食屋では、それを逐一修正しない。
忙しい時間帯の誤差として、そのまま受け取る。

台湾の朝食は、
正確さよりも流れを優先する文化の上に成り立っている。

袋を手に外へ出る。
注文が通ったという事実だけが残る。

その一連の流れに身を合わせたとき、
私たちは観光客ではなく、
台湾の朝の一部になっている。

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