―― 爆破解体されたスタジアムと世界で最も美しい駅 ――
現在の高雄中央公園は、見通しがよく、地面の起伏もなだらかだ。
芝生の向こうに空があり、人はどの方向からでも出入りできる。
だが、ここは元から開かれた場所ではなかった。
2000年代初頭まで、この敷地の中心には中山体育場があった。
高いコンクリート壁に囲まれたスタジアム。
試合やイベントのときだけ人が入り、普段は閉じられている。
都市の真ん中に置かれた、巨大な「壁」。
日常の動線を遮断する、硬い塊だった。
コンクリートを壊すという選択
2000年代、高雄捷運(MRT)紅線の建設計画が進む。
同時に、市の景観を根本から見直す議論が始まった。
出された結論は明快だった。
スタジアムを爆破解体し、緑地に戻す。
老朽化施設の撤去というより、
南国都市が抱える熱と風の問題に対する処方だった。
コンクリートの「フタ」を外し、
空気が流れる余地をつくる。
瓦礫は撤去され、
地形は削られ、盛られ、緩やかな丘に変えられた。
都市の外科手術に近い作業だった。
黄色い屋根が現れるまで
この再編と同時に、MRT中央公園駅(R9)の設計が進む。
起用されたのはリチャード・ロジャースだった。
彼が示したキーワードは「飛揚」。
地下から地上へ、一気に抜ける空間。
駅の地上部を覆うのは、
一枚の巨大な黄色い屋根。
重量は200トンを超える。
だが形は軽い。
金属でありながら、風に浮く葉のように見える。
構造計算と視覚効果が、
「重さ」を意識させない設計を成立させている。

地下と地上を縫い合わせる装置
この駅では、
地下鉄を降りた瞬間から公園が始まる。
エスカレーターの両側には水が流れ、
植栽が連続する。
光は屋根の隙間から地下深くまで落ちる。
暗い地下から地上へ「出る」のではない。
地下の森から、
地上の森へ移動する。
この連続性が評価され、
中央公園駅はしばしば
「世界で最も美しい駅」の一つとして紹介される。
だが美しさは装飾ではない。
空間のつながりが生んだ結果だ。
騒音が消える場所
公園の東側には、新堀江の繁華街がある。
音も人も多い。
だが、駅を出て公園側に立つと、
その気配は急に薄くなる。
壁がなくなったことで、
視線は遠くまで抜け、
人は敷地を横断できるようになった。
かつて閉じていた場所は、
今では誰のものでもある。
太極拳をする老人。
犬を散歩させる人。
特別な目的はない。

引き算としての都市計画
都市開発は、何かを建てる行為だと思われがちだ。
だが、中央公園の変化は逆だった。
巨大な建物を壊し、
何もない緑地をつくる。
この引き算が、
結果的に都市の価値を押し上げた。
黄色い屋根の下で空を見上げる。
ここがスタジアムだったことを知る人は少ない。
だが、この余白こそが、
当時の高雄に必要だった。





