――「普通の最高峰」という居場所 ――
六張犁の駅を出て、少し歩く。
通化夜市の賑わいからも、ほんのわずかに外れている。
観光客の流れに乗るには、少し中途半端な場所だ。
その「中途半端さ」が、この店の静けさを守っているようにも見える。
有名ではある。
けれど、今の台北の空気の中では、もう主役ではない。
そのポジションが、ちょうどいい。
駅から遠いという、ひとつのフィルター
六張犁から歩いて10分少し。
信義安和からでも同じような距離だ。
たったそれだけのことなのに、客層は変わる。
ふらりと寄る観光客は減って、
近所に住んでいる人と、小籠包が好きな人だけが残る。
行列はあるけれど、どこか静かだ。
賑やかさというより、生活の流れに近い音がする。
この遠さはネガティブではない。
むしろ選別機として、うまく働いている。
驚きがない、という完成度
小籠包は、薄すぎず、厚すぎない。
スープは多すぎず、少なすぎない。
肉の味が、まっすぐに出てくる。
尖ってはいない。
でも、どこにも無理がない。
最初のひとつで感動があるわけではない。
それでも、五個目あたりで、静かに納得する。
驚きがない、というのは、毎日食べられるということでもある。
この「普通」は、雑ではなく、積み上げられたものだ。
影の主役:シラスチャーハンとキムチ小籠包
この店は、小籠包だけでは終わらない。
むしろ、そこから先に面白さがある。
吻仔魚炒飯(シラスチャーハン)は、余計な味がしない。
軽くて、油が重たくない。
小籠包のあとでも、箸が止まらない。
泡菜小籠包(キムチ小籠包)もある。
一見、邪道のようで、実は理にかなっている。
豚肉の脂と酸味の組み合わせが、意外と静かに馴染む。
冒険ではなく、試行の延長にある味だ。
「ハレ」じゃない、小籠包の行き着く先
鼎泰豊が「ハレの日の小籠包」なら、
ここは「ケの日の小籠包」だと思う。
特別な日ではなく、
ただ小籠包が食べたくなったときに、思い出される場所。
昔はもっと騒がれていたのかもしれない。
でも、今はこのくらいの距離感のほうが、ちょうどいい。
店を出ると、空気はすぐに日常に戻る。
小籠包の湯気だけが、少し遅れて消えていった。
住所: 106台北市大安區基隆路二段162-4號
営業時間: 11:00 – 14:00 / 17:00 – 21:00 (月曜定休)
アクセス: MRT六張犁駅または信義安和駅から徒歩約10〜12分。臨江街夜市(通化夜市)の近く。
地図: https://maps.app.goo.gl/cdBJ6Fu3BJ36zZQi6
「普通の小籠包」の最高峰。変わり種の「キムチ小籠包」や、パラパラの「シラスチャーハン」も評価が高い。近くに綺麗な支店もあるが、雰囲気なら本店へ。
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