―― 飛行機からシェアサイクルまで ――
台湾を歩いていると、移動が「問題」にならない瞬間が多い。
空港に着き、街に出て、夜市へ行き、帰ってくる。
その一連の流れが、特別な準備や緊張を伴わずに完了する。
それは台湾が「移動しやすい国」だからではない。
移動そのものが、生活の一部として組み込まれているからだ。
ここでは、台湾の移動を
「空から地上へ」「都市間」「街の中」
という層に分けて整理する。
空から街へ
飛行機と空港のレイヤー
台湾への移動は、ほぼ空路から始まる。
桃園、高雄、松山。
どの空港も、規模は違えど役割が明確だ。
国際線で到着し、
入国審査を抜け、
MRTやバス、タクシーへと流れる。
この導線は極端に単純で、
「迷わせない」ことを最優先に設計されている。
台湾の移動は、最初の段階から
ストレスを最小化する思想が見える。
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都市と都市をつなぐ
台湾全体の骨格
台湾は南北に細長い島だ。
その形状に合わせて、移動の幹線も一本の背骨のように伸びている。
高速鉄道(高鉄)は、
台北から高雄までを一直線で結ぶ。
在来線(台鉄)は、
街と街の生活圏を縫うように走る。
長距離バスも含め、
都市間移動は選択肢が多く、価格も安定している。
「移動手段をどうするか」で悩む時間は短い。
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街の中の移動
スクーターと公共交通
台湾の街を特徴づけているのは、
圧倒的なスクーターの存在感だ。
道路の風景は、車よりも人と二輪が支配している。
一方で、
MRT、LRT、バスといった公共交通も
生活の足として機能している。
台湾では
「車を持つか/持たないか」が
生活の質を決定づけない。
移動手段が分散しているからだ。
■関連記事:MRTとバス
最後の数百メートル
歩く、乗る、借りる
駅から目的地までの距離。
この「最後の数百メートル」をどう処理するかで、
街の使いやすさは大きく変わる。
台湾では、
歩道、騎楼、横断歩道が連続し、
歩くことが前提になっている。
そこに YouBike が加わる。
シェアサイクルは、
移動を効率化する道具というより、
街を縮める存在だ。
■関連記事:YouBikeと徒歩
移動が風景になる国
台湾では、移動は「耐える時間」ではない。
バスの車窓、MRTの構内、
スクーターの音、横断歩道の流れ。
それらはすべて、街の風景として存在している。
移動が生活に溶け込むことで、
人は遠くへ行くことを恐れなくなる。
台湾の街がコンパクトに感じられる理由は、
距離ではなく、この心理的な近さにある。
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