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台湾の硬くて青いグァバについての記録

―― 台湾人が愛する甘さを拒絶した果実 ――

台湾の夜市やコンビニで、
白くカットされた果実を見る。

形は丸く、色は淡い。
リンゴか、梨のようにも見える。

口に入れると、音がする。
ゴリッ。

想像していた果物の歯触りではない。
甘さも、ほとんどない。

日本で覚えた
「果物=完熟=柔らかく甘い」
という基準が、ここで役に立たなくなる。


これはデザートではない

違和感の正体は、分類の誤りにある。

台湾のグァバは、
食後に皿に乗る存在ではない。

むしろ、
キュウリやセロリに近い。

テレビを見ながら。
仕事の合間に。

台湾人は、
この硬い果実を、
何も考えずに噛む。

甘味を味わうというより、
顎を動かし、
水分を補給している。


ピンクの粉が仕事をする

屋台でグァバを買うと、
必ず小袋が付いてくる。

梅粉。
乾燥させた梅の粉だ。

これを振りかけると、
味が立ち上がる。

酸味と塩気が、
グァバの中に眠っていた
かすかな甘さを引きずり出す。

スイカに塩をかける理屈と同じだが、
反応は、こちらの方が露骨だ。

果物は、
ここでようやく
スナックになる。


罪悪感のない満腹

この果実が日常に残った理由は、
味だけではない。

グァバは、
ビタミンCが多く、
糖分が少ない。

甘い果物は、
毎日は食べられない。

だが、グァバなら違う。

量を食べても、
身体に言い訳ができる。

台湾での位置づけは、
嗜好品ではなく、
健康維持のための常備品に近い。


種をどう扱うか

中心部には、
硬い種が集まっている。

丁寧に避ける人もいれば、
そのまま噛む人もいる。

どちらも、
特別ではない。

この果実には、
繊細に扱われる前提がない。

皮を剥き、
傷を気にして食べる
日本の桃とは、
生き物としての方向性が違う。


水筒としての果実

亜熱帯の街では、
常に汗をかく。

欲しいのは、
濃厚な甘さより、
口の中を冷やすものだ。

固く、
水分を含んだ果実。

グァバは、
飲み物に近い。

帰国が近づくころ、
あの硬さと、
梅粉の酸味を思い出す。

果物という言葉を外したとき、
この果実は、
ようやく理解できる。


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