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台湾の三色豆花についての記録

台湾の夜市で「豆花」の看板を見つけ、
何気なく注文する。

出てきた器を見て、少し戸惑う。

白い豆腐はない。
代わりに、黄色、茶色、白。
三色に分かれた、ぷるぷるした物体が並んでいる。

ひと口食べてみる。
大豆の香りは、まったくない。

卵プリン。
チョコプリン。
牛乳ゼリー。

どう考えても「豆花」ではない。
それなのに、屋台も客も、誰一人として疑っていない。


正体は「三色豆花」

これは「三色豆花」と呼ばれる、
台湾ではごく普通のデザートだ。

伝統的な豆花は、豆乳を石膏やニガリで固める。
しかし三色豆花は違う。

寒天やゼラチンで、
色と味をつけた液体を固めている。

製法も、素材も、
完全にプリンかゼリーの仲間だ。

それでも「豆花」と呼ばれる理由は、
台湾では豆花という言葉が
大豆そのものではなく、食べ方や見た目を指す言葉に
変わってきたからかもしれない。


豆花が失ったもの、手に入れたもの

本来の豆花は、
スプーンですくうと、舌の上で崩れる。

三色豆花は違う。
揺れる。弾む。跳ね返る。

スプーンで軽く叩くだけで、
ブルンと振動する。

ここには台湾らしい「Q(弾力)」の価値観がある。
柔らかいだけでは、満足できない。

豆花は、
ついに自らのアイデンティティを捨て、
「歯ごたえ」を手に入れた。


チープさが生む、強い記憶

三色豆花は、高級なデザートではない。

味はチープだ。
どこか人工的で、駄菓子っぽい。

けれど、その安っぽさこそが、
台湾人の記憶と直結している。

伝統的な豆花が
「おばあちゃんと一緒に食べた味」だとしたら、

三色豆花は
「学校帰りに、友達と食べた味」だ。

懐かしさは、
必ずしも本物から生まれるわけではない。


テセウスの豆花という逆説

大豆が消え、
製法も変わり、
味も変わった。

それでも、
甘いシロップに浸かり、
レンゲですくって食べるなら、

台湾では、それは「豆花」だ。

材料ではなく、
器と食べ方が、名前を決めている。

もし夜市で、
派手な色の三色豆花を見かけたら、
迷わず注文してみてほしい。

それは間違いなく、
台湾らしさが詰まった
正しい「迷走の完成形」なのだから。


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