―― 庶民のディンタイフォン、永和の静かな避難所 ――
永和は、観光でわざわざ訪れる場所ではない。
川をひとつ越えただけで、空気が少し変わる。
台北よりも生活が前に出ていて、街のリズムが少し荒い。
その永和の住宅街に、五草車中華麵食館はある。
外から見ると、どこにでもある街の麺屋だ。
けれど、ドアを開けると、ひとつ空気が変わる。
冷房が静かに効き、床は意外なほど清潔で、
厨房の動きは手早く、無駄がない。
夜市の喧騒から、少しだけ距離を置いた場所にある。
「にぎやか」ではなく「落ち着ける」。
それが、この店の立ち位置だと思う。
食堂ではなく、小さなレストラン
この店はよく「平価版・鼎泰豊」と言われる。
修行の出自については諸説あるが、
確かにオペレーションや盛り付け、空気感にはその影がある。
ただ、ここには高級さはない。
代わりにあるのは、ちゃんとしたご飯を、ちゃんとした値段で出す意志だ。
観光地ど真ん中の鼎泰豊とは違う。
ここにいるのは、近所で働く人、家族連れ、
そして少しだけ情報に感度が高い人たち。
小籠包は主役ではないけれど
小籠包はこの店の一番人気ではない。
それを担っているのは排骨蛋炒飯だ。
けれど、小籠包もきちんと美味しい。
皮は過度に薄くない。
破れにくく、持ち上げたときに安心感がある。
中のスープはくどくなく、肉の味も素直だ。
1籠 130元。
台北エリアの物価を考えれば、かなり良心的な設定だと思う。
ここでは、小籠包は主役ではなく、
他の料理と並んで普通に存在している。
その扱いが、逆に信頼できる。
真の主役:排骨蛋炒飯
この店に来たら、やはり外せないのは排骨蛋炒飯。
黄金色のチャーハン。
ごはんはパラパラすぎず、しっとりしすぎず、ちょうどいい。
そこに、分厚い排骨(豚カツ)が乗る。
サクッというより、ザクッという食感。
脂もほどよく、味付けも濃すぎない。
「鼎泰豊の炒飯に似ている」とよく言われるが、
値段と気楽さを考えれば、ここに軍配を上げたくなる日もある。
紅油蝦仁炒手という脇役
エビのワンタンを辣油で和えた「紅油蝦仁炒手」も良い。
辛さは控えめ。
ラー油が前に出すぎず、海老の甘さを邪魔しない。
主張しすぎない料理だが、
箸休めとしてちょうどいい余白になる。
夜の動線:楽華夜市まで
五草車のある永和は、
実は楽華夜市の徒歩圏内でもある。
近いと言い切るほどではないが、
食後の腹ごなしにはちょうどいい距離だ。
五草車で涼しく夕飯を食べて、
そのあと夜の街を歩きながら夜市に向かう。
喧噪と日常の、ちょうど中間。
この街には、そのくらいの距離感が似合う。
五草車は、わざわざ目指す店ではない。
けれど、永和という街に理由を作ってくれる店ではある。
住所: 234新北市永和區永和路一段46號
営業時間: 平日 11:00-14:00 / 17:00-21:00、土日 11:00-21:00 (通し営業)
アクセス: MRT永安市場駅から徒歩約5〜6分。楽華夜市の近く。
地図: https://maps.app.goo.gl/GwGVvXWmfWQuosAy5
「庶民の鼎泰豊」の実力店。特に「排骨蛋炒飯」は本家に迫るクオリティ。食後は近くの楽華夜市を散策するのがおすすめ。
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