MENU

高雄駅の地下化についての記録

2002年、高雄駅の地下化工事が始まった。
問題は、1941年に建てられた旧駅舎だった。

通常であれば、解体か部分保存が選ばれる。
高雄市は、別の判断をした。

建物ごと、横にずらす。
総重量はおよそ2,500から3,000トン。

ジャッキで持ち上げ、
レールに乗せ、
82メートル横へ動かす。

建物は壊されず、
そのまま移動した。

当時、台湾最大規模の曳家だった。


仮設駅の時代

旧駅舎が退いたあと、
簡素な臨時駅舎が設けられた。

地下化工事は想定以上に時間を要した。
16年以上。

その間に育った世代にとって、
仮設駅こそが高雄駅だった。

一方、旧駅舎は工事現場の端に置かれ、
展示館として使われていた。

役目は残されていたが、
中心ではなかった。


帰ってくる建物

2021年、
地下駅の完成が見え始めた。

再び、駅舎が動く。
今度は、元の位置へ戻すための移動だった。

19年ぶりの帰還。
建物は、行って、戻ってきた。

都市の中で、
記憶が途切れずに循環した。


二つの様式が並ぶ

戻ってきた旧駅舎は、
帝冠様式と呼ばれる建築だ。

鉄筋コンクリートの躯体に、
日本風の瓦屋根。

その背後に、新しい屋根が現れる。
白く、有機的な曲線。

設計はMecanoo。
雲のようにも、ガジュマルの枝のようにも見える。

昭和の瓦と、
未来的な白。

両者は対立せず、
同じ場所に置かれている。


線路が消えたあと

地下化の成果は、
建築の新旧対比だけではない。

かつて線路は、
街を南北に分断していた。

前駅と後駅。
繁華街と下町。

地下に潜ったことで、
地上は一続きの空間になった。

都市は、
物理的に縫合された。


新旧共存の姿

広場に立つと、
白い屋根の下に旧駅舎が見える。

否定も、消去もされていない。
包み込まれて、残っている。

19年の家出を終えた建物は、
以前より落ち着いて見える。

この街の中心に、
戻る場所があったという事実だけが残る。


よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次