台湾の紅豆についての記録|辺境のルビー
台湾のドリンクスタンドや車輪餅の屋台では、「紅豆」の横に産地名の「萬丹」が添えられている。煮た豆は粒を残しながら、口に入れると弾むのではなく、薄い皮ごと静かにほどけていく。
台湾のドリンクスタンドや車輪餅の屋台では、「紅豆」の横に産地名の「萬丹」が添えられている。煮た豆は粒を残しながら、口に入れると弾むのではなく、薄い皮ごと静かにほどけていく。
冷凍うどんのコシ、ポン・デ・リングの歯に返る弾力、冷蔵庫から出したスイーツのモチモチ感。どれも日本の食卓に昔からあった食感のようで、原材料表示には「加工デンプン」という別の顔が見える。
台湾の屋台やコンビニで売られるタピオカは、冷蔵庫に一晩置いてもゴムのような弾力を保つことがある。本来、デンプンの「Q」は冷めるほど硬くなるはずなのに。
台湾のピザには黒糖味のタピオカが乗り、ワッフルを切ると白い餅がチーズのように伸びる。見た目は海外の料理でも、噛んだ瞬間に返ってくる感触だけが別の基準で組み立てられている。
台湾の夜市やコンビニでは、味の説明にまじって「很Q」「Q弾」といった一文字が並んでいる。タピオカから肉圓、魚団子まで、形も料理も違う食べ物が同じ感覚で語られている。
ロサンゼルス郊外の簡素な店で、台湾系移民向けに売られていた黒い粒入りの飲み物は、いまやパリや東京の街角にも同じ姿で並んでいる。手鍋の一杯が、国境を越えて再現されるまでには、いくつもの境目があった。
豆花やかき氷の上に、透明な小さな粒が乗っている。噛むと弾むその食感を台湾では「QQ」と呼ぶが、粒の原料をたどると、台湾の外の作物に行き着く。
太いストローで冷たいミルクティーを吸うと、液体の途中から弾力のある粉圓が上がってくる。お茶として飲んでいるはずの一杯に、食べる動作が組み込まれている。
台湾の夜市では、マンゴーと練乳を載せたかき氷が、溶け始めたそばから食べられていく。一方、都市のカフェで並ぶビンスーは、長く形を保ったまま、席とスマートフォンの前に置かれている。
一口かじると、薄い皮が乾いた音を立てて崩れ、麦芽糖の餡だけがゆっくり伸びる。台中土産の定番になった菓子は、最初からきれいに食べられるようにはできていない。