―― 台湾の香りを支える「見えない4本柱」」 ――
飛行機を降りて空港の空気を吸ったとき。
深夜のコンビニの前を歩いたとき。
夜市の屋台が一斉に火を入れる18時のあの匂い。
台湾に来た瞬間、まず鼻が反応する。
甘い湯気、香ばしい油、どこか東南アジアを思わせるスパイスの影。
その香りが発する方向性には、一貫した「台湾らしさ」がある。
少し立ち止まって考えてみると、
この空気をつくっている正体は、思ったよりシンプルなのかもしれない。
台湾を台湾たらしめている 4つの調味料 が、
街のあらゆる場所で存在感を放っているのだ。
- 沙茶醬(サーチャージャン)
- 八角(スターアニス)
- 油蔥酥(揚げネギ)
- 醬油膏(とろみ醤油)
どれも派手ではない。
しかし、この4つの「味の基礎(ベース)」を知ると、
台湾料理の地図が一気に立ち上がってくる。
以下では、それぞれが担っている役割を簡潔に整理する。
これは、台湾の食を理解するための4つのコンパスでもある。
沙茶醬(サーチャージャン)
台湾版バーベキューソース。隠れた主役。
潮汕系・福建系の食文化がルーツ。
ピーナッツ・乾物・スパイスが混ざり、独特の“煙たい旨味”を生む。
用途は焼き物、炒め物、火鍋のタレまで幅広い。
台湾の料理に「コク」を出したい時、必ずと言っていいほど登場する。
一口目に感じる“曖昧な濃さ”の正体は、たいていこれ。
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八角(スターアニス)
飛行機を降りた瞬間のあの匂い。台湾の記憶。
コンビニの魯肉飯、夜市の滷味、家庭のスープ。
八角は台湾の背景の香りとしてあまりに定着している。
甘くて強い。その香りだけで台湾を思い出す人も多いはず。
日本人が醤油の匂いを帰宅と感じるように、
台湾の人にとっては八角こそが生活の匂いなのだ。
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油蔥酥(揚げネギ)
台湾料理をまとめる黄金の粉。
紅蔥頭(エシャロット)を油でじっくり揚げたもの。
丼に一振りするだけで、味が一段跳ねる。
フランス料理がエシャロットをバターと合わせて繊細なソースにするのに対し、
台湾はラードで揚げてドバっと入れる。
フランス:洗練
台湾:生存のパンチ力
この荒々しさこそ、小吃の生命線だ。
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醬油膏(とろみ醤油)
醤油文化の台湾版。
日本の醤油に似ているが、粘度が高く、甘い。
とろりと食材に絡むことで、味が散らず、まとまりが出る。
豆花、油飯、揚げ物、なんでも受け止める器の大きさがある。
あと一味足りないと感じた時の仕上げにもっとも使われるソース。
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台湾の味は4つの座標で理解できる
台湾を歩くと、
「なんとなく似た香りがする街だ」と感じることがある。
それは偶然ではなく、
サーチャージャン、八角、油蔥酥、醬油膏という4つの基軸が
無数の料理を支えているからだ。
派手なスパイスより、日常の調味料が街をつくる。
台湾の屋台街が放つ台湾らしさは、
この4つの働きの積み重ねなのだと思う。
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