台湾・魯肉飯の歴史についての記録
台湾の食堂で出てくる魯肉飯は、豚肉の煮込みと米を合わせた小さな丼にすぎない。けれどその一杯には、王朝の料理名と海を越えた保存技術、時代ごとに変わった米の姿が重なっている。
台湾の食堂で出てくる魯肉飯は、豚肉の煮込みと米を合わせた小さな丼にすぎない。けれどその一杯には、王朝の料理名と海を越えた保存技術、時代ごとに変わった米の姿が重なっている。
台北の百貨店や空港では、薄い皮から肉汁が透けるほど整った小籠包が、台湾の代表として蒸籠に並んでいる。けれどその一皿には、台湾料理でおなじみの弾力や八角の香り、甘辛い味付けがほとんどない。
マレーシアの街角では、朝から生地を鉄板に叩きつける音が響いている。薄く伸ばして焼かれた何も入っていない円盤を、客は手でちぎり、カレーに浸して食べる。
ガラスケースの前では、茶色い料理の山を前にした客が、ほとんど立ち止まらず皿を進めていく。メニューも値段も見当たらない店で、注文は会話より先に指先と流れで形になっている。
ジョージタウンのママックでは、白いご飯にいくつものカレーがかかり、境目のない茶色い皿が出てくる。隣では、甘い紅茶が泡を立て、夜の客が「Boss」と呼び合っている。
ペナンのナシカンダー店では、白米が見えなくなるほど複数のソースをかける「バンジル」が注文される。料理名には、材料でも地名でもなく、天秤棒で担ぐ動作が残っている。
台北の牛肉麺店では、紅焼か清燉かを選ぶメニューの端に、赤い「番茄牛肉麺」が置かれていることがある。トマトの果肉が残る丼の前には、昼休みを削って並ぶ人の列もできている。
円山花博公園に並ぶ牛肉麺のテントでは、料理人が金メダルと観客の視線を相手に一杯を競っている。その一方で、細い路地の店では、賞状のない牛肉麺がいつもの客に静かに運ばれている。
台南の夜市で、老舗と同じ「度小月」の三文字が、ステンレスの調理台とプラスチックの椅子の上に掲げられている。店内で整えられた担仔麺とは違う空気の中で、その看板だけが同じ顔をしている。