草に埋もれた「旧高雄駅」についての記録
高雄の街なかで、建物も舗装もない広い芝生に、無数のレールだけが草の下から浮かび上がっている。そのすぐ脇を白いLRTが走り、かつて貨車が行き交った線路の上では子どもが凧を揚げている。
高雄の街なかで、建物も舗装もない広い芝生に、無数のレールだけが草の下から浮かび上がっている。そのすぐ脇を白いLRTが走り、かつて貨車が行き交った線路の上では子どもが凧を揚げている。
高雄のどこからでも見える85大樓は、遠くからなら今も港都の象徴に見える。だが足元に立つと、止まったエレベーターと封鎖された低層階が、巨大な塔の内側に広がる静けさを伝えてくる。
哈瑪星駅を出て南へ走ると、古い倉庫の脇をLRTが進み、少し先では白い音楽ホールが水辺に現れる。貨物列車と塀に占められていた港の道に、いまは自転車と人の流れが続いている。
高雄の駅前では、徒歩では少し遠く、タクシーを呼ぶほどでもない場所へ向かう黄色い自転車が並んでいる。そこから車道に出ると、短いクラクションと手の動きだけが、スクーターの流れの中で交わされている。
午後5時、高雄の人々が家路を急ぐころ、自由黄昏市場にはバイクと買い物袋が次々と集まる。並んでいるのは料理の材料より、照りのある鴨肉や野菜炒め、温かいスープだ。
自動ドアの先に現れるのは、湿った床や店先の呼び声が残る市場ではなく、冷房の効いた百貨店の地下のような空間だ。吊るされた金華ハムと整然と並ぶ高級惣菜が、南門市場の入口を飾っている。
市場の中央には、百年前の六角楼を背にして魯肉飯の列が伸びている。買い物かごよりスマートフォンを手にした人が多く、床には生鮮市場らしい水たまりもない。
松山空港へ降りる飛行機が、濱江市場の真上をかすめていく。上引水産の整った店内を出ると、濡れた床をフォークリフトと荷台が行き交い、箱いっぱいの青果が積まれている。