台湾の調味料についての記録
空港を出た瞬間も、深夜のコンビニの自動ドアが開いたときも、夜市で一斉に火が入る時間も、台湾では似た方向の香りが立ち上がる。魯肉飯、牛肉麺、乾麺と料理は違うのに、湯気の奥には同じ輪郭が残っている。
空港を出た瞬間も、深夜のコンビニの自動ドアが開いたときも、夜市で一斉に火が入る時間も、台湾では似た方向の香りが立ち上がる。魯肉飯、牛肉麺、乾麺と料理は違うのに、湯気の奥には同じ輪郭が残っている。
魯肉飯では姿を消して丼の底に残り、貢丸湯では透明なスープに浮かび、鶏肉飯では最後まで粒のまま乗っている。同じ茶色い揚げネギが、料理ごとに別の顔を見せる。
台湾の食堂で調味料のボトルを傾けても、黒い液体はすぐには落ちてこない。ひと呼吸おいて垂れてくる甘いタレが、蛋餅から茹で野菜、南部のトマトまで同じように皿へ残っている。
台湾では、空港の通気口や駅の売店、屋台の湯気から、甘く薬草のような香りが途切れずに漂ってくる。日本人には薬を思わせるその匂いが、街では料理の気配として受け取られている。
小籠包や魯肉飯を思い浮かべて台湾料理を語る人は多いが、暮らす人の夜の選択には火鍋が頻繁に登場する。大きな鍋を囲む店の隣で、仕切りのついた席に一人用の鍋が並んでいる。
台湾の食堂や火鍋店では、茶色く濁った沙茶醬が、卓上やタレ場の丼に置かれている。舌に残るのは滑らかな甘さではなく、干し魚やエビの粒が当たる砂のような感触だ。
台湾の食堂で「炒青菜」と「葱爆牛肉」を並べて見ると、どちらも鍋料理なのに、一方の字だけが火花のような気配を帯びている。厨房ではその「爆」が、油の跳ねる短い時間として現れる。
朝の台湾では、蛋餅や焼餅を受け取った外帯袋が、スクーターの前かごへ次々に収まっていく。小さな店の厨房では、限られた時間と広さのなかで、食事と飲み物が途切れずに流れている。